ADHDの薬が効かないと感じたら|効いてくるまでの時間

ADHDの薬が効かないと感じたら|効いてくるまでの時間

ADHDのお薬を飲んでいるのに、思ったほど変わらない。副作用のほうがつらい。薬を変えてもらったほうがいいのだろうか。当店にも、この形のご相談がよく届きます。

ADHDの薬が効かないと感じている方へ、結論からお伝えします。効いてくるまでの時間は、お薬によって違います。飲み始めて数日で判断してしまうと、本当は合っていたお薬を、合わないものとして手放すことになりかねません。続けるか、変えるか、量を調整するかを決めるのは主治医です。自己判断でやめないでください。そのうえで当店が伺うのは、眠り、食事、飲む時間と胃腸の状態、そして女性の方には月経周期との関係です。

この記事では、お薬ごとに効いてくるまでの時間がなぜ違うのか、手応えがないときに確かめること、副作用がつらいときの具体的な工夫、月経周期で効きが変わること、中医学の見方を順に整理します。読み終えるころには、次の受診で何を伝えればよいかが決まります。飲み始めて間もない方、量を調整している最中の方、食欲が落ちて体重が減っている方、生理前になると効かなくなる気がする方に向けて書きました。

このページの内容

  1. 効いてくるまでの時間は、お薬によって違います
  2. 手応えがないとき、相談で確かめること
  3. 副作用がつらいとき
  4. 月経周期で効きが変わることがあります
  5. 血液検査と栄養から見ること
  6. 中医学ではどう見るか
  7. 生活で見直すこと
  8. 西岡の考え
  9. よくある質問
  10. 自分の場合を整理してほしい方へ

効いてくるまでの時間は、お薬によって違います

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

理由は、お薬によって仕組みが違うからです。仕組みが違えば、体に届くまでの時間も、合う量にたどり着くまでの道のりも違います。「一週間飲んだけれど何も変わらない」が、あるお薬では判断材料になり、別のお薬では早すぎる、ということが起こります。

コンサータ(メチルフェニデート)の場合

飲んだその日のうちに効き方が出るタイプのお薬です。ですから「今日は変わった」「今日は変わらない」が分かりやすいタイプです。

ただし、はじめから最適な量で始めるわけではありません。体に慣らすために少ない量から始め、効き方を見ながら段階的に増やしていきます。最初の量で手応えが薄いのは、珍しいことではありません。つまり、「自分にとっていちばん良い効き方」を実感できるようになるまでには、やはり数週間かかることがあります。

インチュニブ(グアンファシン)の場合

こちらは、コンサータのように脳を急激に刺激するお薬ではありません。脳内の神経の受け皿(受容体)の感度をじわじわと高め、信号を通りやすくする仕組みです。

ですから、細胞の環境が整うまでに数週間から1か月以上かかります。飲んだその日に何かが変わるお薬ではない、と知っておいてください。

さらに、強い眠気や血圧の低下が出やすいお薬でもあります。そのため、1週間以上の間隔をあけながら慎重に量を調整していきます。自分に合った量(維持量)に届くまでに、どうしても何週間かかかります。「一か月経つのに変わらない」という方に伺うと、まだ量の調整の途中だった、ということがよくあります。

ストラテラ(アトモキセチン)など、そのほかのお薬

お薬によって、効き方の出方も、待つ期間の目安も変わります。処方されたときに、どれくらいの期間で判断するかを主治医・薬剤師に確認しておくと、迷わずに済みます。当店でも、お薬の名前と飲み始めた時期を必ず伺います。

だから、飲み始めてすぐに判断しないでください

数日で「効かない」と決めて自己判断でやめてしまうと、いちばん困るのは、そのお薬が合っていたのかどうかが分からなくなることです。次に別のお薬を試すときの手がかりも失われます。

つらいのであれば、やめるのではなく、伝えてください。どう感じているか、いつからか、日常のどこに支障が出ているか。量やタイミングの調整で変わることがあります。判断するのは主治医です。

手応えがないとき、相談で確かめること

当店で伺うのは、お薬そのものではなく、その周りにある三つです。

眠れているか

まずここから確かめます。理由は、眠りが崩れたままだと、日中の集中の話をしても前に進まないからです。寝つけない、夜中に目が覚める、朝起きられない、日中に強い眠気がある。実際、「薬が効かない」とおっしゃる方の何割かは、この状態が重なっています。日中の眠気がお薬の作用を打ち消すように働いていることもあれば、そもそも睡眠不足で集中できないこともあります。どちらなのかを分けて見ます。

食事の土台がとれているか

毎食たんぱく質がとれているか。朝食が主食だけ、あるいは抜けていないか。甘い飲み物が増えていないか。

ここを確かめるのは、神経のはたらきに関わる材料が食事から来るためです。ただし、何かを足せば効きがよくなる、という話ではありません。材料と栄養の話はADHDとドーパミン|「増やす」より先に確認したいことで詳しく整理しています。

飲む時間と、胃腸の状態

いつ飲んでいるか、食事との前後関係はどうか。あわせて胃腸の調子を伺います。食後に強く眠くなる、胃もたれしやすい、便通が乱れている。どれだけ食事に気をつけても、胃腸が弱っていれば体に入りません。手応えの話をする前に、ここを見ておきたいのです。

副作用がつらいとき

まず主治医に伝えてください

不眠、食欲低下、動悸、イライラ感、吐き気や腹痛、眠気、立ちくらみ。こうした症状が出ているなら、我慢せずに処方した医師へ伝えてください。量やタイミング、お薬の種類の調整で変わることがあります。減らすか、変えるか、続けるかを決めるのは主治医です。当店から減量をお勧めすることはありません。

食欲が落ちて、体重が減っているとき

これはよくご相談いただく場面なので、具体的に書きます。

考え方は「食べられるときに、効率よく」です。食欲がある時間帯にしっかり食べてください。お薬の効いている時間帯は食欲が落ちる方が多いので、そこで無理に食べようとするより、食べられる時間に寄せるほうが現実的です。

食べられる量が少ないときは、量を増やすより中身を濃くします。栄養価の高いゼリー、牛乳、チーズ、プロテインなどを取り入れると、少ない量でもカロリーとたんぱく質がとれます。

そして、朝昼夜の3食にこだわらないでください。食べられるときに少しずつ、で構いません。一日の合計でとれていれば十分です。

ただし、体重が減り続けている場合は、工夫の前に受診が先です。必ず主治医にお伝えください。

眠気や立ちくらみが強いとき

インチュニブで出やすい副作用です。日常生活や通勤に支障が出ているなら、我慢せずに主治医へ。次に書くように、月経前の不調と重なって強く出ていることもあります。

月経周期で効きが変わることがあります

女性の方には、必ず月経のことを伺います。「生理前になると効かなくなる気がする」というご相談が、実際にあるからです。

なぜ生理前に効きが悪く感じるのか

排卵後から生理前にかけて、エストロゲン(卵胞ホルモン)という女性ホルモンが減っていきます。特に生理前の後半から生理の初めにかけては、急激に減ります。

エストロゲンが減ると、脳内のドパミンやセロトニンのはたらきも落ちるとされています。もともとこれらが不足しがちなADHDの方では、生理前になると不注意、イライラ、衝動性が、いつも以上に強く出やすくなります。

ここにお薬が重なります。コンサータは、神経のあいだに出たドーパミンが回収されるのを抑えるはたらきのお薬です。土台となるホルモンが下がっている時期は、いつもと同じ量を飲んでいても効果が相殺され、「効きが悪い」と感じやすくなります。お薬が急に合わなくなったのではなく、周期の影響を受けている可能性がある、ということです。

また、コンサータを飲み始めてから、ホルモンバランスの変化などで生理が遅れたり、周期が乱れたりする方もいらっしゃいます。

PMDDが重なっていることがあります

ADHDのある女性は、生理前の激しいイライラや気分の落ち込みを伴うPMDD(月経前不快気分障害)を合併する割合が、一般より高いという報告があります。

生理前にインチュニブの効果が薄れたように感じる、情緒の不安定さのほうが勝ってしまう。その背景に、これが隠れていることがあります。生理前の症状そのものについては、ADHD女性の生理前のイライラ|ホルモンの変動と食事から考えるもあわせてご覧ください。

記録しておくと、受診で伝わりやすいこと

「なんとなく生理前は調子が悪い」では、診察の短い時間で伝わりません。次の形でメモしてください。

  • いつ頃から生理が不順になったか(お薬を飲み始めた時期と比べて)
  • 「生理の◯日前から、特にイライラと不注意が強くなる」という形で、日数と症状
  • 生理前の眠気やだるさと、お薬の副作用(眠気、血圧低下、立ちくらみ)が重なって強く出ていないか

二か月分あれば、周期との関係はかなり見えてきます。相談にお持ちいただければ、一緒に並べて確認します。

血液検査と栄養から見ること

血液検査の結果をお持ちでしたら、ぜひお持ちください。食事の組み立てを考えるときの手がかりとして、一緒に拝見します。

ただし、数値が何を意味するかの判断は医療機関のものです。基準から外れている項目、気になる項目は、当店ではなく主治医にご相談ください。当店が見るのは、その数値と、実際の食事の内容や体調が、どうつながっているかという部分です。

鉄については、不足が疑われる場合はまず医療機関で確認してください。女性は月経のたびに鉄が出ていくため、自覚のないまま減っていることがあります。ただし、検査を受ける前にサプリメントを始めることは勧めません。鉄は足りなくても困りますが、余っても体に負担になります。

なお、オメガ3脂肪酸やビタミンD、亜鉛などとADHDの関連を調べた報告はありますが、これらを補えば症状が軽くなると確かめられているわけではありません。厚生労働省の情報サイト(eJIM)でも、ADHDに対する補完療法の多くは、有効性について結論が出ていないと説明されています。サプリメントを足すことから始めるのは、順番が違います。

中医学ではどう見るか

中医学は、西洋医学とは別の枠組みで体の状態を整理するものです。ADHDを診断したり治療したりする体系ではありませんし、病院の治療の代わりになるものでもありません。そういう別の見方がある、という前提でお読みください。

中医学では、こうした状態を「気(き)」の乱れとして整理します。気とは、体を動かし、心のはたらきを支える力のことです。

気虚(ききょ)― 気が足りない

エネルギーそのものが不足している状態です。手がかりは、朝起きられない、日中に強い眠気がある、疲れやすい、食が細い、食後に強く眠くなること。お薬の手応えがないという方で、眠りと食事が崩れているタイプは、まずここから見ます。副作用で食欲が落ちている方も、ここに当てはまることがあります。

気鬱(きうつ)― 気が滞る

巡りが滞って、内側にこもった状態です。手がかりは、イライラ、緊張が抜けない、ため息が多い、のどがつかえる感じ、肩や首のこり、月経前に不調が強まること。お薬でカバーしきれないイライラ感として出てくるのは、多くがこのあたりです。

気逆(きぎゃく)― 気が上に上がる

気が上に突き上げる状態です。手がかりは、動悸、のぼせ、寝つけない、不安が強い、夜になっても頭の中が静かにならないこと。

胃腸を先に見ることがあります

これらは一人に一つとは限らず、重なって出ることがほとんどです。中医学では、土台の不足と、表に出ている滞りを分けて考え、どちらから手をつけるかを決めます。食べられていない方、胃腸が弱っている方では、先に土台のほうから整えることを考えます。

漢方薬を例に挙げるなら、抑肝散、柴胡加竜骨牡蛎湯、甘麦大棗湯といったものが、状態によって検討されることがあります。ただし「ADHDならこれ」という形では決まりません。年齢、体力、胃腸の状態、眠り、月経、そして飲んでいるお薬によって、選ぶものは変わります。漢方薬も医薬品ですので、副作用が起こることがあります。自己判断で市販のものを長く飲み続けないでください。

病院のお薬と漢方薬は、一緒に使えないものではありません。ただし、処方薬も市販薬もサプリメントも、飲んでいるものをすべて教えていただいたうえで確かめます。

生活で見直すこと

起きる時間からそろえる。寝る時間をそろえようとすると、眠くならない日に失敗します。朝起きられない方ほど、起きる時間を先に固定するほうが結果的に整います。

夕方以降のカフェインを控える。眠りが浅いまま日中の集中を上げようとすると、堂々巡りになります。

食べられる時間帯を知っておく。お薬を飲んでいる方は、食欲が出る時間帯が偏ります。自分はいつなら食べられるのかが分かると、無理な食事の時間割から解放されます。

二週間だけ記録する。飲んだ時間、効いていると感じた時間帯、眠気、食べられた量、体重。女性の方は月経の開始日も。これがあると、受診でも相談でも話がまったく変わります。

西岡の考え

「薬が効かない」とおっしゃる方に、私がまずお伝えするのは「もう少しだけ待ってください」ということです。がっかりされることもありますが、お薬には、その日に効くものと、細胞の環境が整うのを待つものがあります。インチュニブのように受け皿の感度を高めていく仕組みのお薬は、数週間から一か月以上かかります。そこを知らずに数日で判断してしまうのは、もったいないと思っています。

そのうえで、私が見ているのはお薬そのものではありません。眠れているか、食べられているか、胃腸が動いているか。ここが崩れたままだと、どんなお薬も乗りにくくなります。

食欲が落ちて体重が減っている方には、「三食そろえなくていいです」とお伝えしています。食べられる時間に、食べられるものを。ゼリーでも牛乳でもチーズでも構いません。まずは減らさないことです。

そして女性の方には、必ず月経のことを伺います。生理前に効きが悪くなるのは、お薬が合わなくなったのではないかもしれません。周期の影響かもしれない。それが分かるだけで、気持ちの持ちようが変わります。二か月だけ記録して、受診のときに見せてください。

お薬をやめるかどうかを決めるのは、主治医です。当店がお手伝いできるのは、その周りにある土台のほうです。

よくある質問

どのくらい様子を見れば「効かない」と判断していいですか

お薬によって違います。コンサータのようにその日に効くタイプでも、自分に合う量に届くまでに数週間かかることがあります。インチュニブのように受け皿の感度を高めていくタイプでは、数週間から一か月以上かかります。処方されたときに「どれくらいで判断しますか」と主治医・薬剤師に聞いておくのがいちばん確実です。

効かないので自分でやめてもいいですか

やめないでください。自己判断でやめると、そのお薬が合っていたのかどうかも分からなくなります。つらいのであれば、やめるのではなく、いつから、どのようにつらいかを主治医に伝えてください。

病院のお薬と漢方薬を一緒に飲めますか

一緒に使えないものではありません。ただし、飲んでいるものをすべて教えていただいたうえで確かめます。病院のお薬を自分でやめたり減らしたりすることはしないでください。

食欲がなくて体重が減っています。どうすればいいですか

まず主治医にお伝えください。そのうえで、食欲がある時間帯にしっかり食べる、量が少ないときはゼリーや牛乳、チーズ、プロテインなどで中身を濃くする、三食にこだわらず食べられるときに少しずつ、という三つを試してみてください。減り続けている場合は工夫より受診が先です。

生理前になると効かない気がします

珍しいことではありません。生理前はエストロゲンが減り、脳内のドパミンやセロトニンのはたらきも落ちるとされています。同じ量を飲んでいても効きが悪く感じることがあります。「生理の何日前から、どの症状が強くなるか」を二か月記録して、受診のときにお見せください。

サプリメントを足せば効きがよくなりますか

足せば効きがよくなる、という関係は確かめられていません。厚生労働省の情報サイトでも、ADHDに対する補完療法の多くは有効性の結論が出ていないと説明されています。まず食事の土台と眠りを確かめてください。

自分の場合を整理してほしい方へ

このページの要点は三つです。効いてくるまでの時間はお薬によって違い、数日で判断するには早すぎることがあること。つらいときはやめるのではなく、主治医に伝えること。そのうえで、眠り、食事、胃腸、月経周期という土台の側から確かめられることがあること。

今日からできることは、お薬の名前と飲み始めた時期をメモすること、二週間だけ「飲んだ時間・効いていると感じた時間帯・眠気・食べられた量・体重」を記録すること、女性の方は月経の開始日も一緒に書いておくことです。

そのうえで、自分の場合はどこから手をつければよいか分からない、という方へ。三つの入口を用意しています。

まず質問だけしたい方。お薬の手帳の写真や、血液検査の結果をLINEで送ってください。困っている場面と合わせて見ると、次に確認することが整理しやすくなります。

何から確認すればよいか整理したい方。上に書いた記録を二週間分つけて、お持ちください。順番を一緒に決めます。

じっくり相談したい方。オンライン漢方相談は、全国どこからでもお受けしています。所要は一時間ほどです。ご家族だけでのご相談も承ります。

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治療中の方、妊娠中・授乳中の方は、漢方薬やサプリメントを足す前に必ず医師・薬剤師にお伝えください。お薬の量や種類の変更は、必ず主治医の判断によります。

参考文献

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漢方の葵堂薬局 漢方相談 100選掲載(旧バージョン)
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