ADHDが生理前にひどくなるとき|周期との連動を確かめる
生理前になると、別人のようにイライラが止まらない。普段はADHDの薬で何とかなっているのに、生理前だけはどうしようもない。家族に当たってしまって、あとで自分を責める。ご相談でよく聞く言葉です。
ADHDが生理前にひどくなると感じている方へ、結論からお伝えします。まず確かめたいのは、その不調が本当に生理周期と連動しているかどうかです。生理が始まると和らぎ、生理が終わった後は比較的穏やかに過ごせている。この形であれば、月経前の不調として考えられます。日常生活に支障が出ているなら、婦人科や心療内科で相談できるものです。そのうえで当店では、ADHDの特性によるものと、ホルモンによるものが、どう影響し合っているかを伺います。
この記事では、なぜ生理前にひどくなるのか、周期と連動しているかの確かめ方、困っている症状の整理のしかた、お薬の効きが変わること、受診をお勧めするとき、中医学の見方、食事と生活を順に整理します。読み終えるころには、次の一か月で何を記録すればよいかが決まります。生理前の2週間だけ別人のようになる方、薬が効かなくなる気がする方、人間関係に支障が出ている方に向けて書きました。
このページの内容
- なぜ生理前にひどくなるのか
- 本当に生理周期と連動しているかを確かめる
- 困っている症状を具体的にする
- ADHDのお薬を飲んでいる方へ
- 受診を先にお勧めするとき
- 中医学ではどう見るか
- 食事から見ること
- 生活で見直すこと
- 西岡の考え
- よくある質問
- 自分の場合を整理してほしい方へ
なぜ生理前にひどくなるのか
気のせいでも、性格の問題でもありません。体の中で起きていることに理由があります。
日本産科婦人科学会の説明では、排卵してから月経が来るまでの期間(黄体期)の後半に、血液中のエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が急激に低下すると、脳でホルモンや神経伝達物質のバランスが乱れ、こころの不調が現れるとされています。月経前症候群(PMS)と呼ばれる状態です。
PMSの症状に「集中力の低下」が入っています
ここが、ADHDのある方にとって大事なところです。
学会が挙げているPMSのこころの症状は、情緒が不安定、イライラする、気分が落ち込む、不安、不眠や眠気、そして集中力が低下するです。からだの症状としては、のぼせ、偏食や過食、めまい、だるさ、腹痛や頭痛、むくみ、便秘などが挙げられています。
つまり、生理前の不注意や集中の切れやすさは、ADHDの特性からも、ホルモンの影響からも説明できる状態だということです。どちらか一方ではなく、両方が重なって、いつも以上に強く出ている。相談では、この二つがどう影響し合っているかを見ていきます。
どれくらいの人に起きているのか
日本人女性の70〜80%が月経前に何らかの不調を自覚しており、5%は重い月経前症候群で日常生活に困難を感じているとされています。珍しいことではありません。
症状は月経前に3〜10日間くらい続き、月経が始まると自然に軽快・消失する、というのがPMSの形です。この「始まると和らぐ」が、次の章の手がかりになります。
本当に生理周期と連動しているかを確かめる
相談で私が最初にすることは、漢方の話ではありません。その不調が、本当に周期と連動しているかを確かめることです。
理由は、ここが決まらないと打つ手が変わってしまうからです。周期に連動しているなら月経前の不調として考えますが、生理が終わっても同じようにつらいのであれば、別の理由を探すことになります。学会も、症状が毎月決まって月経の前に現れ、月経が始まると和らぐことの確認が大切だとしていて、日々の症状を症状日誌に記録して月経の周期と関連するかを確認する、という手順を挙げています。
見るのは三つです
- 発生時期。生理の何日前くらいからイライラが始まるか
- 軽快するか。生理が始まると和らぐか
- 無症状の時期。生理が終わった後(卵胞期)は、比較的穏やかに過ごせているか
三つ目がいちばん大事です。生理が終わっても変わらずつらいのであれば、周期の話ではないかもしれません。その場合は、婦人科より先に、別の相談先を考えたほうがよいこともあります。
今日から書ける記録のかたち
難しく考えなくて構いません。カレンダーやスマートフォンのメモに、毎日ひと言で十分です。
- 生理が始まった日と終わった日
- その日の調子を3段階で(穏やか/少ししんどい/別人のよう)
- いちばん困ったこと(家族に当たった、衝動買いした、仕事でミスをした、など)を一行
二か月分あれば、周期との関係はかなり見えてきます。受診のときに見せられますし、当店にお持ちいただければ一緒に並べて確認します。「なんとなく生理前は調子が悪い」では、診察の短い時間で伝わりません。
困っている症状を具体的にする
「イライラする」だけでは、次の一歩が決まりません。相談では、いま最も困っていることを三つに分けて伺います。
| 分類 | 具体的に |
|---|---|
| 気分の変化 | イライラ、激しい怒り、涙もろさ、不安感、気分の落ち込み |
| 行動の変化 | 衝動買い、過食、他者への暴言、不注意や衝動性がいつも以上に強くなる |
| 生活への支障 | パートナーや家族とのケンカ、仕事でのミスや人間関係のトラブル |
三つ目の「生活への支障」を伺うのには理由があります。ここが出ているかどうかで、薬局での相談より先に医療機関にかかったほうがよいかが分かれるからです。「言われてみれば、先月も同じことで揉めた」と気づかれる方が、とても多くいます。
そして、この話をされる方はたいてい、後でご自分を責めています。責めなくていいことです。周期と重なって出ているなら、それは意志の強さの問題ではありません。
ADHDのお薬を飲んでいる方へ
相談では、飲んでいるお薬(コンサータ、ストラテラ、インチュニブなど)と、生理前になるとそのお薬が効きにくくなると感じることはあるか、を必ず伺います。
「生理前だけ効かない」と感じるのには、理由があると考えられます。エストロゲンには脳内のドパミンやノルアドレナリンのはたらきを支える面があり、これが急に減る時期は、同じ量を飲んでいても効きが相殺されるように感じやすくなります。お薬が急に合わなくなったのではなく、周期の影響を受けている可能性がある、ということです。
また、お薬を飲み始めてから生理が遅れたり、周期が乱れたりする方もいらっしゃいます。いつ頃からそうなったかを、飲み始めた時期と並べてメモしておいてください。
大切なことを二つ。ひとつ、生理前に効かないからといって、自分の判断で量を増やしたり飲むのをやめたりしないでください。判断するのは主治医です。ふたつ、生理前の眠気やだるさと、お薬の副作用(眠気、血圧の低下、立ちくらみ)が重なって強く出ていないかも見てください。そのまま主治医にお伝えいただく材料になります。
お薬の効き方そのものについては、ADHDの薬が効かないと感じたら|効いてくるまでの時間で詳しく整理しています。
受診を先にお勧めするとき
当店にご相談いただく前に、医療機関にかかっていただきたい場合があります。
- 自分なりの工夫では限界を感じるとき
- 過多月経(経血の量が多い)や、強い生理痛があるとき
- PMSやPMDDに伴って、イライラ、気分の落ち込み、不注意・衝動性が普段以上に強くなるとき
PMDDとは
PMDD(月経前不快気分障害)は、月経前症候群のなかでも特にこころの症状が重く、日常生活も困難な場合に診断されることがあるものです。治療の対象になるものですから、我慢して抱えるものではありません。
ADHDのある女性は、このPMDDを合併する割合が一般より高いという報告があります。生理前に情緒の不安定さのほうが勝ってしまう、という方の背景に、これが隠れていることがあります。
何科にかかるか
月経に関わる症状が中心なら婦人科です。気分の落ち込みや不安が強く、日常生活に支障が出ているなら心療内科・精神科、あるいはADHDでかかっている主治医に相談してください。迷ったら、まず婦人科で構いません。
受診のときは、先ほどの記録を持っていってください。学会も、こころの症状がうつ病といった精神的な病気でないかを確認することが重要だとしています。周期との関係が分かる記録は、その見分けに役立ちます。
中医学ではどう見るか
中医学は、西洋医学とは別の枠組みで体の状態を整理するものです。PMSやPMDDを診断したり治療したりする体系ではありませんし、医療機関の治療の代わりになるものでもありません。そういう別の見方がある、という前提でお読みください。
中医学では、月経前の不調を「気(き)」と「血(けつ)」の状態から見ます。気は体を動かし心のはたらきを支える力、血は体を養うものと考えます。
気滞(きたい)― 気の巡りが滞る
ストレスや緊張で巡りが滞り、内側にこもった状態です。中医学ではこれを肝鬱気滞(かんうつきたい)とも呼びます。ここでいう肝は、西洋医学の肝臓ではなく、気の流れを調える役割としてまとめられた考え方です。手がかりは、イライラ、些細なことで爆発する、ため息が多い、のどがつかえる感じ、胸や脇が張る、乳房が張ること。生理前に強まるタイプの代表です。
血虚(けっきょ)― 体を養う血が足りない
手がかりは、顔色が冴えない、立ちくらみ、眠りが浅い、爪が割れやすい、経血が少ない、または多くて疲れやすいこと。経血が多い方は、自覚がないまま鉄が減っていることがあります。
瘀血(おけつ)― 巡りが滞る
手がかりは、生理痛が強い、経血に塊がまじる、肩こりや頭痛、冷えとのぼせが同時にあること。
重なって出ることがほとんどです
一人に一つとは限りません。気の滞りと血の不足が重なる、という形がよく見られます。中医学では、土台の不足と、表に出ている滞りを分けて考え、どちらから手をつけるかを決めます。
漢方薬を例に挙げるなら、加味逍遙散、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸といったものが、状態によって検討されることがあります。ただし「生理前のイライラならこれ」という形では決まりません。冷えの有無、経血の量、眠り、胃腸の状態、そして飲んでいるお薬によって、選ぶものは変わります。漢方薬も医薬品ですので、副作用が起こることがあります。自己判断で市販のものを長く飲み続けないでください。
体質の見方そのものについては、ADHDと漢方|不注意・イライラを体質から考えるという見方もあわせてご覧ください。
食事から見ること
先に書いておきます。食品やサプリメントを、病気を治すものとして使うことはできません。ここで見るのは、土台がとれているかどうかです。
鉄のこと
経血が多い方は、毎月そこから鉄が出ていきます。自覚のないまま減っていることがあるので、血液検査を受けたことがあるかを伺います。貧血の有無だけでなく、体に蓄えられている鉄の量も見てもらえると、その後の判断がしやすくなります。ただし、数値の判断は医療機関のものです。検査を受ける前に鉄のサプリメントを始めることは勧めません。鉄は足りなくても困りますが、余っても体に負担になります。
血糖値の波
生理前は甘いものが欲しくなりやすい時期です。甘いものや飲み物で血糖値が急に上がって急に下がる食べ方をしていると、気分の波も大きくなりやすくなります。まず一週間、飲み物も含めて書き出してみてください。減らすかどうかは、それから決めれば十分です。血糖値と気分の関係は、ADHD女性の感情の起伏|血糖値の波と、食事から考えるで整理しています。
たんぱく質
毎食とれているか。朝食が主食だけ、あるいは抜けていないか。生理前は食欲が変わりやすい時期なので、いつもの食べ方が崩れやすくなります。学会も、ふだんの生活で食物繊維の多い複合炭水化物やカルシウム、亜鉛などを意識することを挙げています。
生活で見直すこと
起きる時間からそろえる。生理前は眠りが浅くなりやすい時期です。寝る時間をそろえようとすると眠くならない日に失敗するので、起きる時間を先に固定するほうが続きます。
体を温める。入浴、腹巻き、足元を冷やさないこと。ぬるめのお湯に15分ほど浸かるところから。症状を消すためではなく、休みやすくするためのものです。
予定を先に減らしておく。記録で「生理の◯日前から崩れる」が見えてきたら、その期間に大事な打ち合わせや締め切りを置かない。これがいちばん現実的な対策です。
離れる手を決めておく。感情が高ぶったときに、その場を離れる、手を洗う、外の空気を吸う。あらかじめ決めておくと、そのときに考えずに済みます。
家族に先に伝えておく。「この時期はしんどい」と事前に共有できていると、ケンカの起き方が変わります。記録を見せるのがいちばん早いです。
西岡の考え
生理前のご相談で私が見ているのは、ADHDの特性によるものと、ホルモンによるものが、どのように影響し合っているか、ということです。どちらか一方に決めつけると、手の打ちようがなくなります。
ですからまず、本当に生理周期と連動しているかを確かめます。生理の何日前から始まるのか。生理が始まると軽くなるのか。そして、生理が終わった後は穏やかに過ごせているのか。この三つ目まで揃って、はじめて周期の話として考えられます。
そのうえで伺うのは、いま最も困っていることです。気分のことなのか、行動のことなのか、それとも生活に支障が出ているのか。「イライラする」のままでは、どこから手をつけるかが決まりません。
そして、自分なりの工夫では限界だと感じているなら、婦人科や心療内科にかかってください。経血が多い、生理痛が強いという場合も同じです。PMDDは治療の対象になるものです。当店にできるのは、その手前と周りを支えることで、我慢を勧めることではありません。
最後にひとつ。この時期のことでご自分を責めている方が、本当に多いです。周期と重なって出ているのであれば、それは意志の強さの問題ではありません。まず二か月、記録をつけてみてください。それだけで、気持ちの持ちようが変わる方がいらっしゃいます。
よくある質問
生理前だけADHDの薬が効かなくなるのはなぜですか
生理前はエストロゲンが急激に減ります。エストロゲンには脳内のドパミンやノルアドレナリンのはたらきを支える面があるため、同じ量を飲んでいても効きが相殺されるように感じやすくなります。お薬が合わなくなったとは限りません。ただし、自己判断で量を変えたりやめたりしないでください。
生理中や生理後も集中できないのですが
その場合は、周期との連動ではないかもしれません。生理が終わった後(卵胞期)に比較的穏やかに過ごせているかどうかが、見分けの手がかりになります。ずっと同じようにつらいのであれば、月経前の不調としてではなく、別の背景を探します。
これはPMSですか、PMDDですか
診断は医療機関で行われます。ここでお伝えできるのは、こころの症状が特に重く、日常生活も困難な場合にPMDDと診断されることがある、という区分です。二か月分の記録を持って婦人科や心療内科にご相談ください。
市販の漢方薬を自分で買ってもいいですか
名前や口コミだけで選ぶことは勧めません。特に、ほかのお薬を飲んでいる方、持病のある方、妊娠中・授乳中の方は、飲み合わせを確かめる必要があります。購入の前に薬剤師にご相談ください。
病院の薬と漢方薬を併用しても大丈夫ですか
自己判断で組み合わせないでください。飲んでいるお薬をすべて教えていただければ、一緒に使えるか、使うとしたら何に注意するかを確かめます。病院のお薬を自分でやめることもしないでください。
漢方薬はどのくらい続けることになりますか
状態と、続いている年数によって変わります。目安をお伝えしたうえで、途中で何を見て判断するかも一緒に決めます。ずっと飲み続けることが前提ではありません。
生理周期が不安定でも相談していいですか
構いません。ただし、周期の乱れそのものについては、まず婦人科で調べておいたほうがよいことがないかを確認してください。そのうえで、生活と体質の両方から整理していきます。
自分の場合を整理してほしい方へ
このページの要点は三つです。生理前の不注意やイライラは、ADHDの特性とホルモンの影響が重なって出ていること。まず本当に周期と連動しているかを、生理が終わった後の過ごし方まで含めて確かめること。自分なりの工夫で限界を感じるなら、婦人科や心療内科にかかってよいこと。
今日からできることは、生理の開始日と終了日、その日の調子を3段階、いちばん困ったことを一行。この記録を二か月分つけることです。
そのうえで、自分の場合はどこから手をつければよいか分からない、という方へ。三つの入口を用意しています。
まず質問だけしたい方。記録の写真や血液検査の結果をLINEで送ってください。周期と症状の出方を合わせて見ると、次に確認することが整理しやすくなります。
何から確認すればよいか整理したい方。二か月分の記録をお持ちください。順番を一緒に決めます。
じっくり相談したい方。オンライン漢方相談は、全国どこからでもお受けしています。所要は一時間ほどです。
妊娠中、授乳中の方、持病のある方、お薬を飲んでいる方は、漢方薬やサプリメントを足す前に必ず医師・薬剤師にお伝えください。
参考文献
- 日本産科婦人科学会「月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)」https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=13(確認日 2026年9月16日)
- 国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト 発達障害(神経発達症)」https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=MbkmLbVbTEhSpxyE(確認日 2026年9月16日)