脂肪肝(MASLD)|健診で指摘されたら

脂肪肝(MASLD)|健診で指摘されたら

脂肪肝は段階で見る。脂肪がたまっただけの段階は減量で戻ることが期待でき、炎症が起きた脂肪肝炎はALT・血小板・FIB-4で見張り、線維化して肝硬変になると元に戻らない

健診で「脂肪肝」「ALTやγ-GTPが高い」と言われ、「経過観察で」と言われたまま何もしていない。お酒をほとんど飲まないのに、あるいは痩せているのに脂肪肝と言われて戸惑っている。そんな方に向けて書いています。結論からお伝えします。脂肪肝は放置してよい病気ではありませんが、脂肪がたまっただけの段階なら、体重の7%を目標にした減量と生活の見直しで改善が期待できることが診療ガイドラインで示されています。まず、健診の ALT が30を超えていればかかりつけ医か消化器内科を受診し、腹部エコーと血液検査で「脂肪がたまっているだけ」か「炎症や線維化が進んでいる」かを確かめてください。漢方薬で肝臓の脂肪を溶かすことはできません。葵堂薬局の漢方相談でお手伝いできるのは、食事と運動の見直しを続けられる体をつくるために、疲れやすさ、胃腸の弱り、むくみ、眠りといった体調面を整えることです。

このページでは、脂肪肝の新しい呼び方と診断基準、健診票のどの数値を見るか、病院の治療の基本、当店の相談で多いパターン、中医学の見立て、今日から変えられることを順に整理します。読み終えたとき、自分の脂肪肝が受診を急ぐ段階か、生活の見直しで様子を見てよい段階かを分けて考えられ、次の受診で何を聞けばよいかが分かることを目指しています。「経過観察と言われたが何をすればいいか分からない」「痩せているのに脂肪肝と言われた」という方に、特に読んでいただきたい内容です。

このページの内容

  1. 脂肪肝とは
  2. 検査で確認すること
  3. 病院の治療の基本
  4. 当店の相談で最初に伺うこと
  5. 相談で多いパターン
  6. 中医学では脂肪肝をどう捉えるか
  7. 血液検査と栄養で見ること
  8. 食事・運動・お酒・睡眠
  9. 西岡の考え
  10. よくある質問

脂肪肝とは

脂肪肝は、肝臓の細胞に中性脂肪がたまった状態です。お酒が原因でない脂肪肝は長く NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)と呼ばれてきましたが、日本消化器病学会と日本肝臓学会は2024年に MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)という名称に改め、2026年に診療ガイドラインを改訂しました。名前が変わった理由は、脂肪肝が肝臓だけの病気ではなく、糖尿病や高血圧と同じ代謝の病気だと分かってきたからです。

MASLD は、エコーなどで脂肪肝があり、次の5つのうち1つ以上に当てはまり、飲酒が基準(純アルコールで男性1日30g、女性20g未満)に収まる場合に診断されます。健診票で確かめられます。

  • BMI 23以上、または腹囲が男性94cm・女性80cm超
  • 空腹時血糖 100mg/dL以上、または HbA1c 5.7%以上
  • 血圧 130/85mmHg以上
  • 中性脂肪 150mg/dL以上
  • HDLコレステロール 男性40・女性50mg/dL以下

頻度は高く、患者向けガイドでは日本の有病率は9〜30%、つまり大人の3〜10人に1人です。肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、脂肪がたまっただけでは症状はありません。

脂肪がたまっただけの状態と、炎症が起きている状態

脂肪肝の多くは、脂肪がたまっているだけの単純性脂肪肝で、この段階なら減量で元に戻ることが期待できます。一部で肝臓に炎症が起き、これを MASH(旧 NASH、脂肪肝炎)と呼びます。有病率は3〜5%です。炎症が続くと肝臓が硬くなる線維化が進み、何年もかけて肝硬変や肝がんに至ることがあります。日本肝臓学会は、生活習慣病を背景にした脂肪肝から肝硬変・肝がんに至る人が増えていると注意を促しています。

肝臓だけの問題ではない

MASLD診療ガイドライン2026では、脂肪肝のある人の主な死因の一つが心血管疾患で、心不全を新たに起こすリスクが約1.5倍とされています。大腸がんなど肝臓以外のがん、慢性腎臓病、睡眠時無呼吸との関連も指摘されています。「肝臓の数値が少し高いだけ」と考えず、体全体の代謝のサインとして受け止めてください。

検査で確認すること

健診票で見るのは次の項目です。

  • ALT・AST:肝細胞が傷つくと血液に漏れ出す酵素。ALT は他の臓器にあまり無いので肝臓の傷を反映します。日本肝臓学会の奈良宣言は、ALT が30を超えたらまずかかりつけ医を受診し、採血と腹部エコーを受け、必要なら消化器内科へ、と勧めています
  • γ-GTP:お酒や薬の影響で上がりやすい
  • 血小板:肝臓の線維化が進むと減る
  • 中性脂肪、HDLコレステロール、血糖・HbA1c、血圧、腹囲:MASLD の診断に使う代謝の指標

医療機関では腹部エコーで脂肪がたまっているかを確認し、線維化の進み具合を FIB-4 index で推定します。FIB-4 は「年齢×AST ÷(血小板×√ALT)」で計算する指標で、健診の血液検査だけで出せます。ガイドラインでは 2.67 を超えると高リスクで専門医へ紹介、1.3〜2.67 は中間で、血小板が20万/μL未満、AST・ALT が高い状態が続く、画像で肝硬変が疑われるなら紹介、とされています。かつては肝生検が必要でしたが、いまは診断に必須ではなく、エラストグラフィ(超音波で肝臓の硬さを測る検査)など体に負担の少ない検査で評価できます。

受診前に手元にそろえるもの

  • 過去2〜3年分の健診票(ALT・AST・γ-GTP・血小板・中性脂肪・血糖の推移)
  • 体重と腹囲の変化、飲酒の量と頻度
  • 飲んでいる薬、サプリメント、健康食品の名前

受診を急ぐ症状

  • 白目や皮膚が黄色い(黄疸)
  • お腹が張って足がむくむ(腹水)
  • 吐血、黒い便
  • ぼんやりして受け答えがおかしい

これらは肝硬変が進んだサインです。脂肪肝の段階で出ることはまずありませんが、出たときは経過観察ではなく受診です。

病院の治療の基本

脂肪肝の治療の中心は生活習慣の見直しで、肝臓の脂肪を直接減らす薬はありません。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020は、肥満があれば体重の7%を目標に減量し、徐々に標準体重を目指すことを勧めています。体重80kgなら約5.6kgです。まず7%、というのは「標準体重まで落とさないと意味がない」わけではない、という意味でもあります。

糖尿病や脂質異常症を合併している場合は、その治療が脂肪肝の経過にも関わります。糖尿病の薬のうち SGLT2阻害薬や GLP-1受容体作動薬は、ガイドラインで脂肪肝への良い影響が期待されている薬で、糖尿病がある方に医師が検討します。ビタミンEやピオグリタゾンが使われることもあります。いずれも脂肪肝という病名だけで処方される薬ではなく、合併症や検査結果をもとに医師が判断します。

飲酒の基準は、純アルコールで男性1日30g、女性20g未満。ビール大瓶1本、日本酒1合半、ワイングラス2杯半が男性の上限にあたります。すでに脂肪肝があり数値が高い場合は、減らすより一度やめることを勧められます。

当店の相談で最初に伺うこと

  • 健診結果の数値(ALT・AST・γ-GTP・中性脂肪・血糖)と、前回からの変化
  • 腹囲と、体重が増えた時期と増え方
  • 飲酒の量と頻度
  • 甘い飲み物、間食、夜食、果物の量
  • 服用中の薬、サプリメント、ウコンなどの健康食品
  • 医師に「経過観察」と言われただけか、腹部エコーを受けたか
  • 疲れやすさ、朝の起きにくさ、胃腸の調子、便通、眠り

ALT が30を超えていてエコーを受けていない方には、相談と並行してまず受診をお勧めしています。脂肪がたまっただけなのか、炎症が起きているのかで、急ぐ度合いが変わるからです。

相談で多いパターン

①40〜50代男性、内臓脂肪型でお酒と外食、自覚症状なし

健診で毎年指摘されるが困っていない、という方です。当店では、数値の推移とエコーの有無を確認したうえで、飲酒、夜の食事、締めの一品のうち、一つだけ変えるところを一緒に決めます。全部を一度に変えようとして続かない方が多いからです。

②お酒をほとんど飲まないのに数値が高い

お酒が原因でない脂肪肝です。ご飯、パン、麺、菓子、甘い飲み物といった糖質や果糖で、消費しきれなかった分が肝臓で中性脂肪に合成されます。当店では食事の中身と、運動不足による筋肉量の低下を見ます。

③痩せ型・女性なのに脂肪肝

果物やジュース、間食が多い、更年期で中性脂肪が上がった、という方です。筋肉量が少ないと基礎代謝と糖を使う力が落ち、余ったエネルギーが肝臓にたまりやすくなります。体重ではなく、食事の中身と筋肉、月経や更年期の状態を見ます。

④数値より、朝起きられない・体が重い・夕方に極端に疲れる

脂肪肝そのものは症状を出しませんが、脂肪肝のある方が慢性的な疲労感で来られることは多くあります。睡眠の質、胃腸の働き、食後の眠気や血糖の波を確認します。検査では異常なしなのに疲れやすいときも参考にしてください。

⑤産後や30代後半から体重が戻らず脂肪肝、疲れやすい

年齢とともに筋肉量が減り、同じ食事でも脂肪が残りやすくなります。睡眠不足と冷え、胃腸の弱りが重なっていることが多く、そこから整えます。30代後半から急に太りやすくなるのはなぜで詳しく書いています。

⑥食事を減らしているのに数値が下がらない、胃腸が弱い

量を減らして栄養が足りなくなると、筋肉が落ちて代謝がさらに下がります。中医学でいう脾(胃腸)の弱りを見て、減らすのではなく中身を変える方向で考えます。

中医学では脂肪肝をどう捉えるか

これは中医学の考え方で、西洋医学の診断とは別の枠組みです。中医学では脂肪肝を肝臓だけの病気と捉えず、全身の巡りと体質から考えます。

  • 痰湿(たんしつ)・痰飲(たんいん):余分な水分やドロドロした脂質が体に停滞した状態。体が重い、むくむ、胃もたれ、舌の苔が厚い
  • 脾虚(ひきょ):飲食物を消化して気に変える「脾」の働きが弱った状態。食後の眠気、軟便、疲れやすさ。痰湿が生まれる土台と考えます
  • 瘀血(おけつ):血の巡りが滞った状態。肩こり、頭痛、舌の色が暗い
  • 肝鬱気滞(かんうつきたい):ストレスで気の巡りが滞った状態。イライラ、胸のつかえ、ため息
  • 湿熱(しつねつ):お酒や脂っこいものが多い方に見られる、湿と熱がこもった状態。口が苦い、口臭、便がべたつく

たとえるなら、肝臓は物流倉庫です。入荷(糖質・アルコール・脂質)が出荷(活動・代謝)を上回れば在庫(脂肪)があふれます。中医学では、入荷を減らすだけでなく、倉庫で働く人手(脾の働き)と搬出路(気血の巡り)を整えることを考えます。痩せ型の脂肪肝では脾虚と痰湿、内臓脂肪型では痰湿に湿熱や瘀血が重なることが多く、見立てが変わります。証(体質の見立て)と処方は一対一ではなく、同じ脂肪肝でも冷え、胃腸、睡眠、服用中の薬によって選択が変わります。

血液検査と栄養で見ること

  • ALT・AST・γ-GTP・血小板:肝臓の状態
  • 中性脂肪・HDL・血糖・HbA1c:代謝の状態
  • フェリチン(鉄の貯蔵量):医師が必要に応じて確認する項目。鉄を含む健康食品を使っていれば伝える

甘い飲み物と果糖は肝臓で中性脂肪になりやすく、まず減らす対象です。たんぱく質が不足すると筋肉が落ちるので、食事は量を減らすより中身を変えます。ウコンなど肝臓によいとされる健康食品には鉄分を含むものがあり、肝機能が低下している状態では鉄が肝臓にたまって細胞を傷つける原因になることがあります。薬剤師として、健康食品が原因と思われる肝機能の異常に出会うこともあります。自己判断で始めず、飲んでいるものは主治医と薬剤師に伝えてください。

食事・運動・お酒・睡眠

食事

短期間の極端な減量は勧められません。ガイドラインの目標は7%を徐々に、です。甘い飲み物をやめる、夜食と締めの一品をやめる、主食を減らした分をたんぱく質と野菜に置き換える。この三つから一つ選びます。

運動

歩く量を増やし、スクワットなど筋肉を使う運動を加えます。筋肉は糖を使う最大の臓器で、筋肉量が戻れば同じ食事でも肝臓に残る脂肪が減ります。

お酒

「糖質ゼロのハイボールなら太らない」「焼酎は残らない」と思われがちですが、肝臓にとってはどれも同じアルコールです。アルコールが入ると肝臓は解毒を最優先にするため、一緒に食べた揚げ物や締めの麺・ご飯は、代謝されずにそのまま中性脂肪として肝臓にたまります。すでに脂肪肝がある方には、減らすより一度やめることを勧めています。

睡眠

睡眠不足は食欲と血糖に影響し、甘いものに手が伸びる原因になります。眠りの悩みが強い方は不眠のページも参考にしてください。

西岡の考え

漢方薬で肝臓の脂肪を溶かすことはできません。脂肪肝の治療は食事と運動とお酒の見直しが中心で、それは病院でも当店でも同じです。当店でお手伝いできるのは、見直しを続けられる体をつくることです。疲れて動けない、胃腸が弱くて食事を変えられない、眠れなくて甘いものに手が伸びる。そうした体調面を整理し、その方に合った漢方薬を検討します。最初に健診結果を見せていただき、ALT が30を超えていてエコーを受けていなければ、まず消化器内科か肝臓内科の受診をお勧めしています。

よくある質問

Q. 漢方で脂肪肝は治りますか

漢方薬で肝臓の脂肪を取ることはできません。食事と運動の見直しが中心で、当店ではそれを続けられるよう体調面を整えます。

Q. 経過観察と言われました。何もしなくていいですか

経過観察は「今すぐ治療は要らない」であって「何もしなくてよい」ではありません。脂肪がたまっただけの段階なら減量で戻ることが期待できる時期です。ALT が30を超えていてエコーを受けていなければ、受けておくことを勧めます。

Q. 痩せているのになぜ脂肪肝と言われるのですか

糖質や果糖の多い食事と筋肉量の少なさが重なると、体重が普通でも肝臓に脂肪がたまります。体重ではなく食事の中身と筋肉を見ます。

Q. お酒はどのくらいまでなら

基準は男性で純アルコール1日30g未満、女性20g未満です。すでに脂肪肝で数値が高いなら、一度やめることを勧めます。種類を変えても肝臓への負担は同じです。

Q. ウコンや肝臓のサプリは飲んでいいですか

自己判断では勧めません。鉄分を含む製品があり、肝機能が低下しているときは負担になることがあります。主治医と薬剤師に相談してください。

Q. 何科に行けばいいですか

消化器内科か肝臓内科です。かかりつけ医がいれば、まずそこで採血とエコーを受け、必要なら紹介してもらいます。

Q. 脂肪肝は肝硬変になりますか

多くは脂肪がたまっただけの段階にとどまりますが、炎症(MASH)が続くと線維化が進み、肝硬変に至ることがあります。FIB-4 index やエラストグラフィで線維化の程度を確認できます。

まずはご相談ください

健診結果をお持ちでしたら、症状や今の状況とあわせてLINEやメールでお気軽にお送りください。

もう少し詳しくお話を伺いたい方は、無料のオンラインカウンセリングをご利用ください。


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参考文献

  • 日本消化器病学会・日本肝臓学会「MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版)」2026年4月 https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/masld.html(確認日 2026年9月19日)
  • 日本消化器病学会・日本肝臓学会「NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版)」https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/nafldnash2020_2_re.pdf(確認日 2026年9月19日)
  • 日本肝臓学会「奈良宣言」一般の方向け https://www.jsh.or.jp/medical/nara_sengen/ippan.html(確認日 2026年9月19日)
  • 日本消化器病学会・日本肝臓学会「患者さんとご家族のためのNAFLD/NASHガイド2023」https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/disease/pdf/nafld_2023.pdf(確認日 2026年9月19日)
漢方の葵堂薬局 漢方相談 100選掲載(旧バージョン)
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