漢方コラム
ものもらいが治らない・繰り返すとき|受診の目安と、体質から見ていくこと

ものもらいが治らない。治ったと思っても、疲れるとまた同じところが腫れる。目薬をもらって一度は落ち着くのに、年に何度も繰り返す。そういうご相談をよくお受けします。
先にお伝えします。まぶたが赤く腫れて痛むときは、まず眼科で「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」なのか「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」なのか、それとも別の病気なのかを確かめてください。治療は眼科が中心です。そのうえで、年に何度も繰り返す場合は、まぶただけを見ていても話が進みません。漢方の葵堂薬局では、食事、胃腸の調子、寝る時間、目をこする癖まで伺っています。
この記事では、すぐ受診してほしいサイン、麦粒腫と霰粒腫の違い、眼科の治療で治まってもまた繰り返す背景、繰り返す方に当店が伺っていること、家でできることを順に整理します。読み終えるころには、今日どこから手をつけるかを決められます。大人で何度もものもらいを繰り返している方に向けて書きました。
このページの内容
- その日のうちに眼科へ行ってほしい4つのサイン
- 麦粒腫と霰粒腫|「治らない」の中身が違います
- 眼科ではどんな対処をするか
- 治まってもまた繰り返すのはなぜか
- 繰り返す方に、当店が伺う5つのこと
- 中医学ではまぶたをどう見るか
- 食事と栄養で確認すること
- 家でできること、しないほうがよいこと
- 漢方薬はどう考えるか
- よくあるご質問
- 自分の場合を整理してほしい方へ
その日のうちに眼科へ行ってほしい4つのサイン
次のどれかに当てはまるときは、この記事の続きを読むより先に眼科を受診してください。
- まぶた全体がパンパンに腫れて、目が開けにくい
- ズキズキとした強い痛みがある、痛くて眠れない
- 黄色い膿や、大量の目やにが出ている
- 発熱がある、目の周り全体が赤くなっているなど、全身の症状をともなう
また、見えにくくなった、物が二重に見える、目を動かすと痛いという場合は、ものもらい以外の病気が隠れていることがあります。早めに受診してください。
麦粒腫と霰粒腫|「治らない」の中身が違います
ものもらいと呼ばれるものには、大きく二つあります。「治らない」と感じている方の中には、そもそも種類が違っているために、思っていた経過にならない方がいます。
麦粒腫は、まぶたの脂や汗を出す腺に細菌が感染して起こる急性の炎症です。地域によって「めばちこ」「めいぼ」とも呼ばれます。まぶたの一部が赤く腫れ、まばたきをすると痛みます。悪化するとまぶた全体が腫れ、目やにが出ます。
霰粒腫は、まぶたの脂の出口が詰まり、中にたまった脂に体が反応して起こる慢性の炎症です。細菌感染が主役ではないため、痛みや赤みが強くないかわりに、コリコリとしたしこりが残ることがあります。抗菌薬の目薬をさしてもしこりが小さくならないのは、このタイプであることが少なくありません。
どちらなのかは、見た目だけでは判断できません。まぶたにしこりが残っている、何週間も引かないという場合は、あらためて眼科で確認してもらってください。
眼科ではどんな対処をするか
抗菌薬による治療
麦粒腫では、原因菌に対する抗菌点眼薬や抗菌眼軟膏が使われます。症状が強い場合は、抗菌内服薬が使われることもあります。多くは治療を始めて1〜2週間ほどで落ち着くとされています。
切開して膿を出す処置
腫れが強く、点眼薬だけでは対応できないと判断された場合には、患部を切開して膿を出す処置が行われることがあります。霰粒腫でしこりが大きい場合にも、内容物を取り出す処置が検討されます。
どの処置を受ける場合でも、目を手でこすらないようにしてください。こすると悪化したり、治りが遅くなったりします。小さな傷から別の感染が起こることもあります。自分でつぶすことは絶対に避けてください。
治まってもまた繰り返すのはなぜか
抗菌薬は、そのときに起きている炎症に働きます。一方で、まぶたの脂の出口が詰まりやすい状態や、疲れが抜けにくい状態がそのままであれば、条件がそろったときにまた起こります。これが「治ったのに、また同じところが腫れる」の正体であることが多いです。
相談を受けていて多いのは、もともと脂の分泌管が細く、中の脂もベタベタして詰まりやすい方です。このような方は、甘いものや脂っこいものが増えた時期、寝不足が続いた時期、胃腸が乱れた時期に、決まって同じ場所が腫れてきます。
まぶたは体の中でもっとも皮膚が薄い場所のひとつで、細い血管が集まっています。全身の疲れや食事の乱れが、比較的早く現れる場所だと考えています。
繰り返す方に、当店が伺う5つのこと
繰り返すものもらいのご相談では、目薬の話から入りません。まず次の5つを伺います。ご相談の前に、思い出せる範囲で書き出してきていただけると、話が早く進みます。
| 伺うこと | なぜ伺うか |
|---|---|
| 甘いもの、脂っこいものの量 | まぶたの脂の性質や、炎症の起こりやすさに関わると考えているため |
| 緑黄色野菜(にんじん、かぼちゃなど)や卵が足りているか | 皮膚や粘膜を保つのに必要な栄養が、食事から抜けていないかを見るため |
| 胃腸の調子(食べすぎ、消化不良、便通) | 中医学では、まぶたは胃腸の状態と関係が深いと考えるため |
| 何時に寝ているか | 回復にあてる時間が確保できているかを見るため |
| 目をこする癖、アイメイク、コンタクトレンズの扱い | まぶたの出口をふさぐ要因、傷をつくる要因を減らすため |
この5つは、どれも今日から変えられることです。漢方薬を足すより先に、ここを一緒に整理していきます。
中医学ではまぶたをどう見るか
中医学では、まぶたを「脾(ひ)」、つまり消化吸収の働きと関係が深い場所として考えます。ここでいう「脾」は、西洋医学の脾臓のことではなく、食べたものを体の材料に変える一連の働きを指す言葉です。
繰り返すものもらいでは、次のような見立てを手がかりにしています。あくまで体の状態を整理するための見方で、病名とお薬が一対一で決まるものではありません。
- 熱がこもりやすい状態:辛いものやお酒を好み、赤み・腫れ・化膿が起こりやすい。余分な熱をさばく方向で考えます。
- 気虚(ききょ)の状態:疲れやすく、風邪をひきやすい。回復に必要な「気」を補う方向で考えます。
- 瘀血(おけつ)の状態:巡りが滞りやすく、同じ場所に繰り返しできやすい。巡りを整える方向で考えます。
実際にどの見立てにあたるかは、体力、冷え、のぼせ、胃腸、便通、月経の状態などを伺ったうえで考えます。同じ「繰り返すものもらい」でも、検討する内容は人によって変わります。
食事と栄養で確認すること
繰り返す方の食事を伺うと、甘いもの、パン、麺類で一日が埋まっていることが少なくありません。糖質は足りていても、皮膚や粘膜をつくる材料が不足している状態です。
- 毎食、肉・魚・卵・大豆製品のいずれかが入っているか
- にんじん、かぼちゃ、ほうれん草などの色の濃い野菜を食べているか
- 甘い飲み物や菓子パンが毎日になっていないか
- 揚げ物や脂っこい食事が続いていないか
これらは食品であり、病気を治すものではありません。食事だけでものもらいがなくなるとお約束することもできません。それでも、繰り返す方の生活を伺っていると、ここが抜けていることが多いため、最初に確認しています。
健康診断や血液検査の結果をお持ちの方は、一緒に拝見します。ただし、数値だけで原因を決めることはできません。自己判断でサプリメントを大量に摂ることは避けてください。
家でできること、しないほうがよいこと
温めるかどうかは、眼科の指示に従う
霰粒腫では、まぶたを温めて脂の出口を通りやすくする方法(温罨法)を眼科で勧められることがあります。一方で、赤く腫れて痛む時期や、膿がたまっている時期に温めると、かえって悪化することがあります。温めてよいかどうかは、必ず診てもらった眼科の指示に従ってください。
市販の目薬を自己判断でささない
ものもらいに見えても、結膜炎やアレルギーなど別の病気のことがあります。原因がはっきりするまでは、自己判断で目薬をささないでください。使う場合は、防腐剤(ベンザルコニウム塩化物など)が入っていないもの、または1回使い切りタイプを選ぶと、目への負担が少なくなります。
まぶたの周りの扱い
- 汚れた手やタオルで目をこすらない。前髪が目にかからないようにする
- アイラインやマスカラは、脂の出口をふさぎやすい。その日のうちにきちんと落とす
- 古い化粧品は使い切らずに入れ替える
- コンタクトレンズは、装着前後の手洗いとケースの清潔、交換時期を守る
- 腫れているときは、コンタクトとアイメイクを休む
なお、まぶたを洗いすぎると、必要な脂まで落としてバリアが弱くなることがあります。ごしごし洗う必要はありません。
漢方薬はどう考えるか
漢方薬は「ものもらいにはこの薬」と病名で決まるものではありません。体力、胃腸の強さ、冷えやのぼせ、便通、睡眠、服用中のお薬を確認したうえで検討します。市販の漢方薬を自己判断で長く飲み続けることは避け、購入前に医師または薬剤師にご相談ください。
また、漢方薬は眼科の治療の代わりではありません。処方された目薬や飲み薬を自己判断でやめないでください。当店では、眼科の治療を続けていただきながら、生活のどこを支えられるかという位置づけでご提案しています。
よくあるご質問
何度も同じ場所にできるのは体質のせいですか
「体質」という言葉で片づけず、まず眼科で霰粒腫のしこりが残っていないかを確認してください。そのうえで、脂の詰まりやすさ、食事、睡眠、目のこすり癖など、繰り返す条件が重なっていないかを一緒に見ていきます。
ものもらいは人にうつりますか
麦粒腫や霰粒腫は、基本的に人から人へうつる病気ではないとされています。ただし、はやり目(流行性角結膜炎)のようにうつる病気と見た目が紛らわしいことがあります。判断は眼科にお願いします。
温めるのと冷やすのと、どちらがよいですか
状態によって違います。赤く腫れて痛む時期は、温めると悪化することがあります。しこりが残っている霰粒腫では温めることを勧められる場合があります。自己判断せず、診てもらった眼科の指示に従ってください。
市販の目薬で様子を見てもよいですか
原因がはっきりしないうちは、おすすめしません。痛みや腫れが強いとき、数日たっても変わらないときは、市販薬で様子を見るより受診してください。
しこりが残っています。手術が必要ですか
霰粒腫でしこりが大きい場合や長く残る場合は、眼科で処置が検討されます。処置を受けるかどうかは眼科の判断になります。処置を受けた場合も、繰り返す条件が残っていればまた起こることがあるため、生活の側もあわせて見ていきます。
漢方薬はどのくらい続けるものですか
期間をお約束できるものではありません。しばらく続けたうえで、体調や繰り返す間隔に変化があったかを一緒に振り返ります。合っていないと感じる場合は、見立てから見直します。
コンタクトやアイメイクはやめるべきですか
やめる必要はありませんが、腫れているあいだは休んでください。落ち着いてからも、メイクを残さない、レンズの扱いを丁寧にする、という点は続けていただきたいところです。
自分の場合を整理してほしい方へ
三つの入口があります。
まず質問だけしたい方。食事や生活のことでしたら、LINEでお送りください。目の状態を診断することはできませんので、そこは眼科にお願いします。
何から確認すればよいか整理したい方。上の5つの表に、思い出せる範囲で答えを書いてお持ちください。順番を一緒に決めます。
じっくり相談したい方。オンライン漢方相談は、全国どこからでもお受けしています。所要は一時間ほどです。
病院のお薬を使っている方、持病のある方は、漢方薬を足す前に必ず医師・薬剤師にお伝えください。
ものもらいそのものの症状や原因はものもらいの漢方相談に、病院での治し方はものもらい(麦粒腫・内麦粒腫・霰粒腫)の治し方と対処法に、お子さんの場合は子どものものもらい|すぐ眼科へ行く目安と、家でできることにまとめています。
参考文献
- 日本眼科学会「麦粒腫」https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=5(確認日 2026年9月15日)
- 日本眼科学会「霰粒腫」https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=6(確認日 2026年9月15日)
- 日本眼科医会「ものもらい」https://www.gankaikai.or.jp/health/(確認日 2026年9月15日)


