ADHDとドーパミン|「増やす」より先に確認したいこと

ADHDとドーパミン:食事でまず確認する4つ。毎食たんぱく質、朝食の中身、鉄の検査、甘い飲み物

「ADHD ドーパミンを増やす」。この言葉で調べてこられる方が、とても多くいます。薬は飲んでいる。それでも、自分でできることが何かあるのではないか。そう思って探しておられるのだと思います。

先にお伝えします。食べたものやサプリメントが、そのまま脳の中でドーパミンに変わるわけではありません。脳には血液脳関門という関所があり、口から入れたものがそのまま届く仕組みにはなっていないからです。ですから「増やす」という発想より先に、材料がそろっているか、それを使える体の状態になっているかを見ます。診断と治療は医療機関のものです。飲んでいる薬を自分の判断で加減しないでください。そのうえで当店が伺うのは、毎食たんぱく質がとれているか、朝食がパンとコーヒーだけになっていないか、鉄を測ったことがあるか、甘い飲み物が増えていないかです。

この記事では、ドーパミンとは何か、なぜ「増やす」で解決しないのか、材料と、それを使うために必要なもの、血糖値との関係、薬と食事以外でできること、中医学の見方を順に整理します。読み終えるころには、今日から確認できることが決まります。ADHDと診断されている方、薬を飲んでいても物足りなさを感じている方、お子さんのことで調べているご家族に向けて書きました。

このページの内容

  1. ドーパミンとは何か
  2. 「増やす」で探している方へ
  3. 材料はたんぱく質
  4. 材料を使うために必要なもの
  5. 甘いものと血糖値の波
  6. 食事と薬以外でできること
  7. 多すぎても少なすぎてもうまくいかない
  8. 中医学ではどう捉えるか
  9. 相談で伺うこと
  10. 西岡の考え
  11. よくある質問
  12. 自分の場合を整理してほしい方へ

ドーパミンとは何か

ドーパミンは、脳の中で情報を伝えている物質のひとつです。やる気や集中に関わるとされています。

分かりやすく、脳が使う栄養にたとえて説明することがあります。ADHDの脳では、この栄養が足りていなかったり、あっても、うまく使えていなかったりすると考えられています。

勉強や片づけが普通にできている人は、この栄養を使いこなせている状態です。一方、ADHDの脳にとっては、同じことをしようとしても栄養が足りず、エンジンがなかなかかからない状態になります。「やればいいと分かっているのに動けない」というのは、気持ちの問題ではなく、ここに理由があると考えられます。

逆に、ゲームや自分の好きなことになると、脳から栄養がドバドバ出ます。すると今度はブレーキが効かなくなるくらい集中してしまう。これが過集中です。

同じ人の中で、この二つが同時に起きます。だから、周りからは「やる気の問題」に見えてしまうのです。

「増やす」で探している方へ

ここが、このページでいちばんお伝えしたいところです。

ドーパミンの材料になる「チロシン」というアミノ酸を多く含む食品(チーズ、大豆製品など)やサプリメントはあります。ただし、脳の血管には血液脳関門というバリアがあり、口から摂った成分がそのまま脳の中に入ってドーパミンに変わるわけではありません。「これを飲めば増える」という単純な話にはならないのです。

もう一つ。ADHDの脳では、ドーパミンそのものの量が極端に少ないというより、出たドーパミンが神経細胞のあいだですぐに回収されてしまい、効率よく働いていないと考えられています。つまり、入れる量を増やすより、出たものが働きやすい状態かどうかのほうが問題になります。

サプリメントについても、正直にお伝えします。厚生労働省の情報サイト(eJIM)では、ADHDに対する補完療法について、オメガ3脂肪酸は「現時点でのエビデンスは結論が出ていません」、イチョウ葉は「使用を支持する十分なエビデンスはありません」、瞑想は「有用であるかどうかは明らかにされていません」と説明されています。何かを足せば解決する、という話ではないということです。

では何を見るのか。材料がそろっているか、それを使える体の状態か、そして働きやすい生活になっているか。この三つです。順に見ていきます。

材料はたんぱく質

ドーパミンの直接の材料は、たんぱく質(アミノ酸)です。ここが足りていなければ、ほかを工夫しても始まりません。

確認すること。肉、魚、卵、大豆製品(納豆、豆腐)、乳製品(チーズ)などを、毎食しっかり食べているか。

相談で多いのが、朝食がパンとコーヒーだけ、という「たんぱく質抜き」の食べ方です。昼と夜はとれていても、一日の始まりが抜けていると、午前中がしんどくなります。まずここを確認してください。

目安は、一食あたり手のひら大くらい。難しく考えず、朝に卵を一つ足す、納豆を一パック足す。そこから始めるので十分です。

材料を使うために必要なもの

たんぱく質があっても、それだけではドーパミンになりません。アミノ酸をドーパミンに変えるには、その働きを支えるビタミンやミネラルが欠かせません。当店で確認しているのは次の四つです。

確認すること どう見るか
鉄(フェリチン値) 貧血の有無だけでなく、体に蓄えられている鉄の量を見ます。基準の範囲でも、蓄えが減っていることがあります
ビタミンB6 アミノ酸を扱う働きに関わる栄養素です。食事の内容から確認します
亜鉛 不足しやすいミネラルのひとつです
胃腸の消化吸収能力 どれだけ良いものを食べても、吸収できていなければ身になりません。おなかの調子、便の状態を伺います

鉄については、血液検査の結果をお持ちいただけると話が早く進みます。女性は月経のたびに鉄が出ていくので、自覚がないまま減っていることがあります。

ただし、足りないと分かる前にサプリメントを足すことは勧めません。鉄は足りなくても困りますが、余っても体に負担になります。検査の結果を見てから決めてください。

甘いものと血糖値の波

砂糖の多い甘いものやジュース、ジャンクフードを頻繁にとっていないか。ここも確認します。

血糖値が急に上がって急に下がる食べ方をしていると、脳の状態も不安定になりやすくなります。午後になると決まってぼんやりする、夕方にイライラが強くなる。こうした波が食事のタイミングと重なっていることがあります。

減らすというより、まず一週間だけ書き出してみてください。飲み物も含めてです。「思っていたより入っていた」と気づく方がほとんどです。

食事と薬以外でできること

ドーパミンは、生活の中でも出方が変わります。相談でお伝えしているのは次のようなことです。

有酸素運動をする。激しいものでなくて構いません。歩く、軽く走る、自転車。体を動かしたあとのほうが取りかかりやすい、という方は多くいます。

小さな達成感を置く。大きな目標だけだと、いつまでも達成感が来ません。終わりの見える小さな単位に切って、終わるたびに区切りをつけます。

「新しい刺激」を利用する。ADHDの脳は、新しい刺激でドーパミンが出やすい性質があります。これは弱点ではなく、使える性質です。BGMを変える、場所を変える、道具を変える。手が止まったときに、内容ではなく環境のほうを変えてみてください。

ワクワクする場面をイメージする。これも当店でお伝えしていることです。ただ思い浮かべるのではなく、臨場感を持って。五感を使って、見えるもの、聞こえるもの、香り、感覚、食べ物ならどんな味かまで想像します。頭の中で具体的になるほど、動き出しやすくなります。

多すぎても少なすぎてもうまくいかない

ドーパミンは、多ければ多いほど良いというものではありません。足りなければエンジンがかからず、出すぎればブレーキが効かなくなります。

過集中もそうです。好きなことに何時間も没頭できるのは強みでもありますが、食事を抜き、眠らず、体を消耗させる形で出ていると、翌日以降にしわ寄せが来ます。

ですから、目指すところは「増やす」ではなく「波を小さくする」です。食事、睡眠、運動を整えるのは、そのためです。

中医学ではどう捉えるか

中医学に「ADHD」という病名はありません。集中が続かないこと、落ち着かないこと、気分の起伏を、体全体の状態から見ていきます。

相談では、次のような見方をします。

心脾両虚(しんぴりょうきょ)

脾は消化して体を養う働き、心は精神活動に関わる働きを指す言葉です。この二つが弱った状態です。手がかりは、疲れやすい、食が細い、顔色が冴えない、眠りが浅い、考えすぎてしまうこと。食べられていない方は、ここを先に見ます。

肝鬱化火(かんうつかか)

気の巡りが滞り、そこに熱がこもった状態を指します。中医学の肝は、西洋医学の肝臓そのものではなく、気の流れを調える働きです。手がかりは、いらいら、些細なことで爆発する、寝つけないのに頭がさえる、月経前に強まること。

痰湿・痰熱(たんしつ・たんねつ)

体に余分な水分や濁りがたまった状態です。甘いもの、脂の多いもの、冷たいものの摂りすぎや、胃腸の働きの低下が背景にあると考えます。手がかりは、頭が重い、体が重い、切り替えにくい、胃もたれ。

腎精不足(じんせいふそく)

中医学の腎は、成長と発達に関わる力をたくわえる場所と考えられています。土台の部分です。手がかりは、疲れやすい、寝起きが悪い、腰から下がだるいこと。

これらは一人に一つとは限りません。土台の不足と、表に出ている滞りを分けて考え、どちらから手をつけるかを決めます。漢方薬を病名から選ぶことはしません。年齢、体格、胃腸の状態、飲んでいる薬を確かめたうえで考えます。なお、これは中医学の考え方であり、西洋医学で証明された仕組みではありません。

相談で伺うこと

メモにして持ってきていただけると、話が早く進みます。

伺うこと 具体的に
診断と今の治療 いつ診断されたか。飲んでいる薬、量、飲み始めた時期
今いちばん困っていること 不注意か、衝動性か、過集中か、気分の波か
一日の食事 朝・昼・夜の内容。たんぱく質が入っているか。間食と飲み物
血液検査 結果をお持ちであれば。特に貧血と鉄の蓄え
睡眠 寝る時刻、起きる時刻、そのばらつき。寝つきと途中で目が覚めるか
おなかの調子 便の状態、胃もたれ、食欲
調子の波 一日のどの時間に落ちるか。女性は月経周期との関係

西岡の考え

「ドーパミンを増やす方法」を探して来られた方に、私はまず「増やすという考え方では進みにくいです」とお伝えします。がっかりされることもありますが、そこを飛ばして何かを売ることはしたくありません。

実際に伺っていて多いのは、朝食がたんぱく質抜きになっていること、鉄を一度も測っていないこと、甘い飲み物が毎日入っていることです。この三つは、今日から確認できます。

もう一つお伝えしたいのは、ADHDの脳が新しい刺激でドーパミンを出しやすいという性質は、欠点ではないということです。使い方を知っていれば、味方にできます。BGMを変える、場所を変える。そんな小さなことで動き出せるなら、それでいいと思っています。

診断や薬のことは医療機関のものです。当店が見ているのは、その周りにある食事と生活の土台です。

よくある質問

サプリメントでドーパミンを増やせますか

口から摂ったものが、そのまま脳の中でドーパミンに変わるわけではありません。血液脳関門というバリアがあるためです。厚生労働省の情報サイトでも、ADHDに対する補完療法の多くは、有効性について結論が出ていないと説明されています。まず食事の土台と、鉄などの状態を確かめてください。

病院の薬と漢方薬を一緒に飲んでもいいですか

自己判断で組み合わせないでください。飲んでいる薬をすべて教えていただければ、一緒に使えるか、使うとしたら何に注意するかを確かめます。病院の薬を自分でやめたり減らしたりすることもしないでください。

鉄のサプリメントを飲んだほうがいいですか

まず血液検査で今の状態を確かめてください。鉄は足りなくても困りますが、余っても体に負担になります。検査を受けずに続けることは勧めません。

子どものことで相談してもいいですか

構いません。年齢、体格、胃腸の状態、飲んでいる薬によって、考えられることは変わります。市販のものを名前だけで選ばないでください。まず医療機関の診断と治療があり、そのうえで食事と生活をどう整えるかを考える、という順番です。

過集中は直したほうがいいですか

なくすものとは考えていません。ただ、食事を抜く、眠らないという形で出ていると、翌日以降に響きます。終わりの時刻を先に決めておく、区切りの合図を用意しておく。そういう工夫のほうが現実的です。

自分の場合を整理してほしい方へ

このページの要点は三つです。食べたものがそのまま脳のドーパミンになるわけではないこと。だから「増やす」より、材料とそれを使える状態を見ること。診断と薬は医療機関のもので、自分の判断で加減しないこと。

今日からできることは、朝食にたんぱく質を一つ足すこと、一週間だけ飲み物を含めて食べたものを書き出すこと、鉄を測ったことがあるか確認することです。

そのうえで、自分の場合はどこから手をつければよいか分からない、という方へ。三つの入口があります。

まず質問だけしたい方。血液検査の結果をお持ちでしたら、そのままLINEでお送りください。鉄の状態と、調子の波の出方を合わせて見ると、次に確認することが整理しやすくなります。

何から確認すればよいか整理したい方。上の表に答えを書いてお持ちください。順番を一緒に決めます。

じっくり相談したい方。オンライン漢方相談は、全国どこからでもお受けしています。所要は一時間ほどです。ご家族だけでのご相談も承ります。

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治療中の方、妊娠中・授乳中の方は、漢方薬やサプリメントを足す前に必ず医師・薬剤師にお伝えください。

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参考文献

漢方の葵堂薬局 漢方相談 100選掲載(旧バージョン)
漢方の葵堂薬局 子宝・不妊相談 100選掲載(旧バージョン)
漢方の葵堂薬局 アトピー相談 100選掲載(旧バージョン)

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