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漢方コラム

正常眼圧緑内障はなぜ進むのか|眼圧以外に見ておきたいこと

「眼圧は正常なのに、視野の欠けが進んでいます」。正常眼圧緑内障と診断され、点眼を続けているのに進行が不安で検索を繰り返している方は多く、その不安は自然なものです。先に答えを言うと、眼圧が正常でも進むことは珍しくありません。日本眼科学会は、正常眼圧緑内障でもさらに眼圧を下げると進行が遅くなる、ほぼ止まることが証明されているとしており、点眼を続けることがいちばん確かな手段です。まず眼科で、現在の眼圧、直近の視野検査の結果、進行しているかどうかを確認してください。葵堂薬局の相談では、眼科の治療を続けることを前提に、血の巡り、水分の代謝、気の滞り、肝と腎の状態という眼圧以外の背景を整理します。

この記事では、正常眼圧緑内障とは何か、眼圧が正常でも進む理由、眼科で確認すること、当店の相談で伺うこと、中医学の4つの見方、血液検査と栄養、生活、よくある質問の順に整理します。読み終える頃には、次の眼科受診で何を聞き、生活で何を見直すかが決まります。点眼を続けているのに進行が不安な方、五苓散や葛根湯が緑内障に良いと聞いて迷っている方に向けて書きました。

このページの内容

  1. 正常眼圧緑内障とは
  2. 眼圧が正常でも進むのはなぜか
  3. 眼科で確認すること。急いで受診するサイン
  4. 当店の相談で最初に伺うこと
  5. 中医学では目をどう見るか|血・水・気・肝腎
  6. 血液検査と栄養で見ておきたいこと
  7. 生活で見直すこと
  8. 西岡の考え
  9. よくある質問
  10. 自分の場合を整理してほしい方へ

正常眼圧緑内障とは

眼圧が正常範囲にあるのに、視神経が傷み、視野が欠けていく緑内障です。日本眼科学会は緑内障を、視神経と視野に特徴的な変化があり、通常は眼圧を十分に下げることで視神経の障害を改善または抑制しうる病気と定義し、多くの緑内障患者の眼圧が正常範囲内であることが分かっていると説明しています。

日本人では、この正常眼圧型が緑内障の大半を占めます。岐阜県多治見市で行われた多治見スタディでは、40歳以上の緑内障の有病率は5.0%で、眼圧が21mmHg以下の正常眼圧緑内障が3.6%だったのに対し、眼圧が21mmHgを超えるタイプは0.3%でした。緑内障全体の約7割が正常眼圧型という数字は、この調査に基づいています。

緑内障そのものの症状、検査、治療の全体像は緑内障の原因と、今できることの記事と緑内障の症状別ページにまとめています。この記事は、正常眼圧緑内障と診断された後の話に絞ります。

眼圧が正常でも進むのはなぜか

日本眼科学会は、正常眼圧緑内障でも元の眼圧よりさらに眼圧を下げることで、病気の進行速度が遅くなったり、ほとんど停止したりすることが証明されていると説明しています。この記述から言えるのは、眼圧が「正常範囲」であることと、その人の視神経にとって「十分に低い」ことは別だ、ということです。点眼で眼圧を下げ続けることが、進行を抑えるいちばん確かな手段である理由がここにあります。

そのうえで、眼圧以外の要因も関わります。日本眼科学会が挙げる緑内障のリスク要因は、眼圧が高いこと、高齢、家族に緑内障の人がいること、角膜が薄いこと、血圧が低いこと、糖尿病、そしてきちんと治療を継続していないことです。多治見スタディでは、眼圧、近視、年齢が開放隅角緑内障の危険因子として示されました。視神経への血流や栄養の状態が関わるという考え方もありますが、これは研究の途中にある仮説で、点眼の代わりになるものではありません。

ここで大切なのは、リスク要因の中に「治療を続けていないこと」が入っている点です。眼圧が正常だから点眼をやめてよい、ということにはなりません。

眼科で確認すること。急いで受診するサイン

次の受診で、次の4つを確認してください。当店の相談でも、最初に伺う4点です。

  • 現在の眼圧の数値。可能なら、目標とする眼圧も
  • 直近の検査データ。視野検査と、網膜の厚みを測るOCT(光干渉断層計)の結果と、その間隔
  • 眼科の点眼治療を使っているか。使っているなら、指示どおりに続けられているか
  • 進行しているかどうか。前回と比べて視野やOCTに変化があるか

視野の欠けは初期にはほとんど自覚がないため、進行しているかどうかは自分では分かりません。検査結果を眼科で聞き、できれば数値の写しをもらっておくと、相談のときにも役立ちます。

次のときは、定期受診を待たずに眼科へ行ってください。急に視力が落ちた、目が激しく痛む、頭痛や吐き気を伴う、視野の欠けが急に広がった。眼圧が急に上がる急性の緑内障発作では、眼痛、視力低下、吐き気が起こると日本眼科学会は説明しています。

当店の相談で最初に伺うこと

正常眼圧緑内障の相談では、最初に前の節の4点(現在の眼圧、直近の検査データ、点眼治療を使っているか、進行しているか)を伺います。点眼を使っていない、または自己判断で間隔を空けている方には、漢方の話より先に、眼科の治療を続けることをお願いしています。

そのうえで、相談では次のような方が見られます。

点眼を続けているのに進行が不安で、冷えや疲れが重なっている方

手足の冷え、疲れが抜けない、目の奥が重い、肩や首がこる。視神経への血の巡りと栄養が足りていないのではないか、という見方から、冷え、睡眠、食事、目の使い方を伺います。

むくみ、頭の重だるさ、めまいがある方

中医学では、目の中を巡る水分の代謝も見ます。むくみやすい、頭が重い、天気が悪いとめまいがする。こうした方には、水分のとり方、汗のかき方、便通を伺います。

ストレスが強く、目が緊張している方

いらいら、寝つきが悪い、目が充血しやすい、頭に熱がこもる感じがある。気の滞りが全身の巡りと目の緊張に影響していないか、という見方から、仕事や家庭の負担、休み方を伺います。

中医学では目をどう見るか|血・水・気・肝腎

中医学では、目と関係が深い体の状態を4つに分けて見ます。血の巡り、水の巡り、気の巡り、そして肝と腎の働きです。眼圧の数値には表れない部分で、目や視神経に負担がかかっていないかを、この4つから整理します。

見方 中医学の考え 手がかりになる症状
血(血の巡り) 冷えや生活習慣の乱れで血の巡りが悪くなると、目を養う血が届きにくくなると考える 手足の冷え、肩や首のこり、目の奥の重さ、顔色が冴えない、舌の色が暗い
水(津液・目の中の水分の巡り) 目の中を循環する水分の代謝が滞ると、数値に表れない部分で目に負担がかかると考える むくみ、頭の重だるさ、めまい、天気で体調が変わる、尿の出が悪い
気(ストレス・自律神経) ストレスで気が滞ると、全身の巡りと目の緊張に影響し、目の中に熱や気がこもりやすいと考える いらいら、寝つきが悪い、目の充血、頭に熱がこもる、ため息
肝・腎 「肝は目を養う」「腎は精を蔵する」とされ、目の機能や視神経の健やかさは肝と腎の力に支えられると考える。老化、慢性的な疲労、目の酷使で消耗する 目の乾き、かすみ、耳鳴り、腰や膝のだるさ、夜間の頻尿、疲れやすさ

たとえるなら、視神経は畑の作物、眼圧は畑にかかる重しです。眼科は重しを減らす仕事をしています。中医学が見るのは、水路(血と水の巡り)、風通し(気)、土の力(肝と腎)です。重しを減らすことが先で、そのうえで畑の状態を整える。順番を逆にはしません。

処方は、この4つのどこが崩れているかに、体力、年齢、併用薬を合わせて検討します。「緑内障にはこの漢方」と病名で決まるものではなく、目を直接治す薬でもありません。

血液検査と栄養で見ておきたいこと

相談では、健康診断の結果も見せていただいています。当店が見るのは、コレステロール、血糖、貧血の指標、血圧です。日本眼科学会は、血圧が低いことと糖尿病を緑内障のリスク要因に挙げています。血圧が低めの方、血糖が高めの方は、その数値を眼科にも伝えてください。

あわせて、冷えの有無、寝つきの悪さ、夜中に目が覚めるかを伺います。数値だけで判断はしませんが、食事の内容と合わせて見ると、目を養う材料が足りているか、体が休めているかを整理しやすくなります。

サプリメントについては、特定の栄養素を大量にとることを勧めていません。緑内障の進行を抑えると言い切れる食品やサプリメントはなく、点眼の代わりにはなりません。栄養は食事全体で整えるものとして考え、足すかどうかは血液検査の結果を見てから、眼科と薬剤師に相談してください。

生活で見直すこと

  • 点眼を毎日決まった時間にさす。さし忘れた日を記録する
  • 睡眠時間を確保し、寝つきや中途覚醒の状態を記録する
  • 首や肩のこりをためない。長時間の画面作業では1時間に一度は目を離す
  • 体を冷やさない。特に手足の冷えが強い方は、入浴や衣類で調整する
  • 眼圧に影響する動作(逆立ち、息を止めて力む運動、うつ伏せ寝など)については、眼科に確認する

いずれも眼科の治療の代わりではなく、治療を続けながら整える部分です。

西岡の考え

一度欠けてしまった視野を完全に元に戻すことは、現代医学でも漢方でも非常に難しい。これは最初にお伝えしています。だからこそ、進行を抑えるいちばん確かな手段である眼科の点眼治療を、続けていただくことが前提です。

そのうえで、私は漢方薬を「並走役」と考えています。目を直接治すのではなく、血の巡り、水分の代謝、自律神経のバランスを整えて、目の環境を内側から支える役です。眼科が眼圧を管理し、当店は眼圧以外の背景を整理する。この役割分担を崩さないことが、正常眼圧緑内障の方と長く付き合っていくうえで大切だと考えています。

当店は漢方薬局としては珍しく、目の相談を専門的に受けてきました。緑内障の方に共通して感じるのは、検査の数字だけを見て一喜一憂し、体の状態を見ていないことが多い、ということです。眼圧、視野、OCTの数字と一緒に、冷え、睡眠、ストレス、疲れを並べて見る。そこから、その方に合った整え方が見えてきます。

よくある質問

漢方で視野は戻りますか

一度欠けた視野を完全に元に戻すことは、現代医学でも漢方でも非常に難しいとお伝えしています。漢方相談の目的は、眼科の治療を続ける方の体の状態を整えることで、視野を戻すことではありません。

五苓散は緑内障に良いですか

五苓散は、むくみ、頭痛、めまいなど、体の水分バランスの乱れがある方に用いられる漢方薬で、正常眼圧緑内障の方で水分の代謝の乱れや頭の重だるさを伴う場合に検討されることがあります。ただし、病名だけで選ぶものではなく、冷えやのぼせ、水分バランス、ストレスの有無などの全身の状態を見て判断します。

葛根湯は緑内障に良いですか

葛根湯は、首や肩のこり、初期の風邪、悪寒などに用いられる、体を温めて発汗を促す漢方薬です。肩こりが目に影響すると考えて検討される方もいますが、温める力が強いため、体力がない方や、のぼせ、いらいらがある方には合わない場合があります。一概に良いとは言えず、相談のときに状態をお伝えください。

点眼薬と漢方薬は一緒に使えますか

多くの場合は併用できますが、眼科医に漢方薬を使っていることを伝え、お薬手帳をお持ちください。手術の予定がある方は、事前に眼科と相談が必要です。点眼を自己判断でやめたり、間隔を空けたりしないでください。

サプリメントは飲んだほうがよいですか

緑内障の進行を抑えると言い切れるサプリメントはありません。栄養は食事全体で整えるものとして考え、足すかどうかは血液検査の結果を見てから判断します。持病や服薬がある方は、眼科と薬剤師に相談してください。

進行しているかどうかが分かりません

視野の欠けは初期にはほとんど自覚がないため、自分では分かりません。眼科で視野検査とOCTの結果を前回と比べてもらい、進行の有無と次の検査の間隔を確認してください。

自分の場合を整理してほしい方へ

この記事の要点は三つです。正常眼圧緑内障でも、眼圧をさらに下げることで進行が遅くなる、ほぼ止まることが証明されているので、点眼を続けることがいちばん確か。次の眼科受診で、現在の眼圧、直近の検査データ、進行の有無を確認する。漢方相談は眼科の治療を続ける方の並走役で、血・水・気・肝腎の4つから体の状態を整理する。

今日からできることは、点眼のさし忘れと睡眠の状態を1〜2週間記録することです。眼科で確認することは、現在の眼圧と目標眼圧、視野検査とOCTの結果、次の検査の間隔です。

眼科で言われた眼圧と検査結果、点眼の状況、冷えや睡眠、ストレスの状態を並べて送っていただければ、何から整理すればよいかをお返事します。

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著者

西岡 敬三
漢方の葵堂薬局 代表/薬剤師

西洋医学的な検査データも踏まえて相談を行う漢方専門薬剤師。中医学、漢方、食養生に加え、食べたもので身体ができているをモットーに栄養学の視点も取り入れている。NLPマスタープラクティショナー認定。

著書『心もカラダもラクになる血流の整え方』『病院では教えてくれない西岡式妊活で妊娠まっしぐら』

参考文献