アレルギー
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、気管支喘息やアレルギー性鼻炎と並ぶ三大アレルギー疾患の一つといわれています。20歳以下では、約10人に1人が患っていると推測され、乳幼児期に発症することが多い病気です。それは、成長に伴い治ってしまうケースも多いのですが、大人になって再発するケースも少なくありません。生活習慣や体質を改善して長い目で向き合う必要のある病気です。
■アトピー性皮膚炎の原因は?
アトピー性皮膚炎の原因の一つに、遺伝的な要因が挙げられます。両親がアトピー性皮膚炎の場合は約8割、片親の場合は約5割の割合で子供が発症しているとのデータがあり、遺伝による発症率が高いことが分かります。花粉、ダニ、ハウスダスト、食物などのアレルゲンを特定し、それらを避けた生活をする必要があります。
また、皮膚の水分やセラミドの不足によるバリア機能の低下による場合もあります。皮膚は、体の内側と外側を分けており、健康な皮膚は一番外側にある角質層がバリアとなり、皮膚の中の水分を保ち外敵の侵入を防ぐという境界としての仕事を果たしています。
しかし、バリア機能が低下すると、水分が不足し乾燥した皮膚には隙間ができやすくなります。その隙間から細菌などの侵入を許してしまうことになり、境界としての仕事は果たせなくなります。異物の侵入により、免疫に関わる細胞がそれを感知すると、炎症を起こす物質を放出し湿疹や痒みが起こります。
さらに、暮らしている「環境」も大きな要因ともいわれています。気温が低く乾燥しがちな地域と、気温や湿度が高い地域を比較すると、前記の環境にはアトピー性皮膚炎患者が多いことがわかっています。
アトピー性皮膚炎の原因は、上記のような体質的な要因と環境的な要因が重なったときに、皮膚炎の症状が現れると考えられています。ただし、アトピー性皮膚炎の原因や症状は人によって様々です。例えば、同じ化粧品を使っても大丈夫な人もいれば、そうでない人もいます。また、その時の体調や精神的な状態によっても違ったりもします。これはアトピー性皮膚炎が、一つの要因だけでなく、いくつもの要因が重なって影響する「多因子性」の病気だからということです。
アトピー性皮膚炎の皮膚は、炎症が見られない場合でも、セラミドと天然保湿因子は不足状態にあることが報告されていますから、見た目だけで良くなったと判断せず、専門医と相談することを強くお勧めします。
■アトピー性皮膚炎の症状って?
アトピー性皮膚炎の主な症状は「湿疹」と「痒み」です。この症状が良くなったり悪くなったりを繰り返し、なかなか治らないこと、そして、体の左右対称に出る湿疹がこの病気の特徴です。
その「痒み」は、お風呂上がりや眠りにつく頃、洋服を脱いだり、汗をかいた時など、また心理的にイライラしたり緊張したりと、日常生活で誰しもが行う体や心の働きによって発生します。
「たかだか痒みでしょ」と軽く見られがちですが、日常のごく当たり前の行動にも関わらず、意図せず発生する強烈な痒みは「地獄」と表現しても良いくらい辛いということです。この経験者にしか分からない「痒み」によるストレスで、生活に支障をきたしている人も多いようです。
上記のように原因は様々あります。原因は一つではなく、複数が複雑に絡み合って発症するともいわれていますが、実際のところよく分かっていない部分も多いといいます。はっきりしているのは、アトピー性皮膚炎は鼻炎や花粉症と同じアレルギーが原因となる疾患です。鼻炎や花粉症も人にうつらないように、アトピー性皮膚炎も人から感染する、または感染させてしまうような病気ではないということです。
■アトピー性皮膚炎は年代によって変化する
アトピー性皮膚炎の「湿疹による強い痒み」により、皮膚を掻き壊す、皮膚の状態が悪化する、そして、より強い痒みとなり、また掻き壊すを繰り返す、そんな悪循環に陥ることも珍しくありません。
アトピー性皮膚炎の湿疹は年代ごとに変化します。乳幼児期は赤い小さな湿疹が、顔や頭部を中心に出現し、湿疹、水疱、かさぶたの過程を繰り返します。また、小児期は肘や膝の裏側、関節部分などに現れ、乾燥し粉をふいたようになります。そして、思春期以降になると上半身を中心に現れ、乾燥した皮膚は赤みがかり厚くなります。
近年は大人の発症例が増え、全体の6割を占めるともいわれています。通常湿疹が現れる場所とは異なり、ストレスが原因の場合は顔に現れる傾向があり、社会生活に支障をきたすことも少なくありません。大人のアトピー性皮膚炎にはストレスに対する治療の必要性が高いといえます。
■アトピー性皮膚炎はどうやって診断されるの?
アトピーとは「奇妙な、とらえどころのない」という意味の言葉通り、痒みのある湿疹が繰り返し出現し、良くなるのか、悪化するのか、なかなかはっきりしない病気です。
日本皮膚科学会の診断基準によると、「そう痒」「特徴的皮疹と分布」「慢性・反復性経過(乳児では2ヵ月以上、その他では6ヵ月以上を慢性とする)」とあります。分かりやすく言い換えると、「痒みがあり、その痒みは特徴的な部位に現れ、しつこく長く続く湿疹」、これがアトピー性皮膚炎であり、乳児の場合、それが2ヶ月以上続くことが診断基準となります。
アレルギー性の皮膚炎や皮膚疾患の診断をする時に、特に大切なのは視診と問診です。皮膚は簡単にその状態を目で見て観察することができる臓器です。そして、アレルギーの素因(喘息、アレルギー性鼻炎など)に関して、問診で原因の推定を行います。それにより、カブレやその他の全身にできる皮膚病は除外し、アトピー性皮膚炎を診断することになります。
■アトピー性皮膚炎の治療って?
治療の大きな柱は「薬物療法」「スキンケア」「悪化因子への対策」となります。
アトピー性皮膚炎の症状が現れるということは、アレルゲンやストレスなど、いくつもの原因が重なり「皮膚のバリア機能」が失われている状態です。まずは皮膚の炎症や症状を改善し、皮膚の健康を取り戻すことが大切です。
治療に使われる薬は、過剰な免疫反応をおさえ、炎症を鎮める作用のあるステロイド薬や、非ステロイド性抗炎症薬、免疫抑制薬(タクロリムス外用剤)が主に使用されます。ステロイド薬は、効きめの強さに応じて5つのランクに分類されています。どの薬を、どの程度使うかについては、症状や部位などによって異なります。
基本的な進め方としては、最初は1日数回使用し、症状が改善するにつれ、1日おき、3日おきなどと少しずつ量を減らして、最後には薬ではなく保湿剤に移行します。医師の診断による、症状のレベルに合わせた薬を使用した治療は、アトピー性皮膚炎にとって負のスパイラルともいえる「掻く」という行為を軽減させるためには不可欠な治療です。「掻く」という行為を減らし、刺激に負けないバリア機能を備えた皮膚へと導くのがスキンケア(清潔と保湿)の役目です。
もともと私たちの皮膚には、常在菌という様々な菌が存在しています。健康な皮膚は弱酸性で、それらの菌がバランスよく存在する環境を保っています。しかし、アトピー性皮膚炎の皮膚はアルカリ性に傾きやすく、抵抗力、殺菌力が弱まっている状態で、健康な皮膚と比較すると、黄色ブドウ球菌が多く存在しています。この「黄色ブドウ球菌」が出す毒素がアトピー性皮膚炎を悪化させることがわかっています。
そのため、汗をかいたら洗い流し、炎症を悪化させる「黄色ブドウ球菌」を増やさないことが大切です。また、バリア機能が低下した皮膚には保湿剤も不可欠です。入浴後は時間をあけずに保湿剤を塗り、スキンケアに努めましょう。国立成育医療研究センターによると、乳児期から保湿剤を使用したスキンケアを続けると、アトピー性皮膚炎の発症を減らせることが報告されています。
保湿剤の使い方にはポイントがあります。一般的に保湿剤といわれているものには、ヒルドイドなど保湿のためのものと、ワセリンのような保護薬があります。ワセリンはただ皮膚に塗れば良いというわけではありません。お風呂上がりなど、まだ肌に水分が残されている状態のところに馴染ませるとしっとりします。皮膚の角層の水分量は、入浴後約10分で急激に減少するといわれていますから、入浴後は素早くケアするのが良いでしょう。
医師の処方で用いられる一般的な保湿剤ヒルドイドは、自身の皮膚に合う市販品でも良く、乾燥が気になる季節は、保湿剤を塗ってからワセリンを塗り重ねると効果的です。
■生活で気をつけること(セルフケア)
まず、皮膚を傷つけないよう爪は短く切っておくことが、アトピー性皮膚炎のセルフケアの基本です。特に寝ている時などは無意識に掻いてしまうこともありますし、お子さんに薬を塗ることの多いお母さんも爪のケアは怠らないようにしましょう。
アトピー性皮膚炎のアレルゲンの多くは、イエダニやハウスダストだといわれています。まず、アレルゲンを特定し、できる範囲で取り除く、食物の場合は摂取しない生活をします。
絨毯や畳、ソファやベッド、寝具はダニの住処になりやすいです。購入時の素材選び、清潔を保つためのこまめな掃除と、部屋の換気をしましょう。また、部屋に物が多すぎるとホコリが溜まる表面積が増えます。不要なものを置かないようにして常にスッキリした状態にしておくと、掃除がしやすく症状の軽減に繋がります。
毎日着る洋服は、化学繊維や羊毛は避け、柔らかい生地のものにすると肌への刺激が少ないです。また、手首・足首やウエスト部分のゴムの締め付けがきつくないことも、痒みを誘発する原因を減らすためにチェックする重要なポイントです。ゴムは紐状のものより、板状の方がお勧めです。
洗濯洗剤は、界面活性剤の含有量が少ないもの、蛍光剤を含まないものを選び、濯ぎを十分に行いましょう。また、花粉の季節、ホコリが舞い上がるほど風が強くない日などは、天日干しがお勧めです。天日干しには紫外線による殺菌効果や乾燥時間が短く雑菌の繁殖を抑える効果もあります。
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下しているため皮膚が乾燥しています。湿度が30%を切ると過乾燥になります。湿度計、温度計を置き、加湿器の活用や濡れタオルを部屋に干すなどして湿度を保つことも大切です。
また、食べ物に関してですが、体が温まると痒みが出やすくなります。カレーやチゲ鍋など香辛料や辛い食べ物、アルコールなどは、汗や皮膚のほてり感をもたらしますので注意しましょう。
そして、多くの女性が気になるヘアスタイルですが、毛先があたるとそれが刺激となり、痒みを誘発することがあります。顔や首に刺激を与えないようにヘアスタイルを工夫しましょう。また、ヘアカラーなどでかぶれが出ることがあります。気になる方は専門の医師に相談をしてみるのが良いです。
■体の洗い方と薬の塗り方
湿疹や炎症があり皮膚の状態が健康でない場合、どんなに優しく洗っても、皮膚に刺激を与えてしまうのではと不安になることはありませんか。清潔に保たなければならない反面、刺激を与えるのは良くないとのジレンマと戦っている方もいるかもしれません。
まず、皮膚を洗う時には石鹸をよく泡立てその泡で洗います。泡は洗浄力の目安で、「泡立っている=洗浄力がある」と考えて良いです。また、泡には皮膚の汚れを剥がし包み込む働きがあります。それとともに、クッションとなって摩擦による皮膚への刺激を少なくする働きもあります。手を逆さまにしても落ちないくらいの、きめの細かい泡を作って洗うのが良いでしょう。
その泡をたっぷりと使って洗うのがコツです。しっかりと「手で」すみずみまで洗いましょう。例えば、肘や膝などの関節やおしりにはシワが多いため、洗い忘れ、流し忘れが発生する確率が高い場所です。シワを伸ばし丁寧に洗い、石鹸が残らないよう洗い流すことを心がけます。
お風呂からあがったら、タオルでゴシゴシ拭きたくなりますが、優しく包み込むようにタオルで水分を吸い取るようなイメージで行うと、肌に刺激を与えることなく水分を取ることができます。
そして、入浴後は皮膚の乾燥を防ぐために、できるだけ早く薬を塗りましょう。まず、手に付いている細菌や刺激物が体についてしまうことがあるため、薬を塗る人の手は綺麗に洗い清潔にしましょう。塗り方のポイントは「たっぷりと皮膚に乗せるように塗る」ことです。それは、湿疹のある部分は吸収が良いため、塗り込む必要がないためです。そして、湿疹がある部分は凸凹しています。薄く伸ばしたり、塗り込むと、凹んだ部分には薬が溜まりますが、湿疹で盛り上がっている部分には薬が付きにくくなるためです。
薬の副作用を過剰に心配し、少ない分量を塗り続けてもアトピー性皮膚炎の炎症を抑えらません。「大人の両方の手のひらに塗る分量」、「チューブの薬を大人の人差し指の先端から第一関節まで絞り出した分量」、「0.3~0.5g」は、全て同じくらいの分量と言われています。これを目安に塗ると良いでしょう。
■アトピーをコントロールする方法
アトピー性皮膚炎は慢性疾患とされており、治療により健常者となんら変わらない状態に見えても「はい、今日で治療は終わりです。」とはならない厄介な病気です。そうなると、日常生活の中でのセルフケアは、長期間にわたり続けていかなくてはなりません。症状が落ち着いている時のセルフケアのモチベーションを保つことはとても難しいです。
例えば、皮膚の水分量やバリア機能を機械で計測して数字で表すと、見た目だけでは判断に困りますが、数字として記録できると比較がしやすく、本人のみならず保護者も数値で状態を知ることができます。また、毎日写真に撮って比較するのも良いでしょう。
痒みの記録をつけるようにすると、どんな時に、どれくらい痒くなったのかが分かり対処しやすくなります。また、それをそのまま医師に見せることで、より良い治療に活かすこともできます。以下のような点を意識して記録を取ってみましょう。
- 湿疹の出る前の様子(その時の行動、精神的な部分、皮膚の状態、何を食べたかなど)
- 湿疹が出たときの悪化因子(汗・汚れ・アレルゲンなど)は何だったのか
- 湿疹はどのくらいの期間でおさまったか
- 痒みの強さはどのくらいだったか
- どのような対処をしたのか
- 対処後はどのような経過をしたのか
認定NPO法人日本アレルギー友の会の「かゆみ日誌」や「かゆメモリー」は、インターネットからダウンロードし印刷して使うことができますし、痒みを見える化できるスマホアプリなどもあります。長いセルフケアのモチベーションの維持や、痒みのコントロールに役立ててみてはいかがでしょうか。
■アトピーの痒みに効くツボ
痒みの軽減に効果があるといわれるツボをご紹介します。お灸や指圧刺激をしてみましょう。ただし、患部がツボと重なっている場合は避けましょう。
お灸に使用される「モグサ(ヨモギ)」には、シネオールという精油成分があり、強力な消毒・殺菌・鎮静・鎮痛作用などがあります。お灸により、この成分が皮膚の表面から内部に浸透していきます。この成分は、モグサを燃やした際に出る煙にも含まれています。さらに、モグサの匂いにはリラックス効果もありますから、皮膚からも香りからも良い効果を得ることができます。
ツボ押しは呼吸が大切です。吐く息にゆっくり合わせて、ジワジワと押し、吐き切ったら力を抜きます。この時もゆっくり、今度は息を吸いながら戻していきます。人に押してもらう場合は、2人の呼吸をピッタリ合わせる必要があります。声を掛け合うなどして合わせると良いでしょう。
| ツボの名称 | ツボの位置 |
|---|---|
| 足三里(あしさんり) | 膝のお皿の下外側から指3本下 |
| 肩ぐう(けんぐう) | 腕を真横にあげたときに肩にできる前側のくぼみ |
| 曲池(きょくち) | ひじを曲げてできる横じわの親指側の先端 |
| 三陰交(さんいんこう) | 足首うちくるぶしの一番高いところから指4本上 |
| 血海(けっかい) | 膝のお皿の上内側の角から指3本分上 |
| 百虫窩(ひゃくちゅうか) | 血海の上、親指1本上 |
■アトピーを改善する養生法
中国伝統医学では、病院での治療はしなくても、自然の力を利用して体を健康に導くことができると考えます。都会の暮らしから田舎に引っ越しただけで、アトピーが治った患者さんもいます。それは、綺麗な空気など自然の力によるものです。
昔の生活と異なり、現代社会は慢性的に運動不足になりがちです。汗をかくと痒みが出る方は水泳がお勧めです。しかし、プールの水に含まれている塩素の化合物が、皮膚を傷つけ症状が悪化する場合もあるので注意は必要です。また、ウォーキングなどの運動は、呼吸を促し、肺を強くすることにもつながるため体質改善に有効です。
また、ストレスが原因で体調を崩す「内因の病」といわれる考えがあります。「一生アトピーが治らないかもしれない」、そんな風に思い悩む気持ちが、心身のバランスを崩す原因になっている場合もあります。「アトピーは治る」「痒みのない健康な体になりつつある」、そんなポジティブなイメージで生活をすることが、何よりも大切な心の養生になります。
お灸で使用されている「ヨモギ(モグサ)」の成分には鎮痛作用・痒みを抑える作用があることは上記の通りです。さらに、保温作用があるので冷え性の人にも有効です。この葉をお風呂に入れて入浴すると、アトピーの痒みに対して非常に効果があります。
お風呂に入れる「ヨモギの葉」は、天日干ししてからお風呂に入れたほうが効果は高いのですが、そのままでも十分な効果があります。洗濯ネットなどにひとつかみほど入れて、浴槽に入れてそのまま入浴します。中国伝統医学では、自身と同じ環境にあるものが体に良いとされますので、近所に自生しているものを使うと良いでしょう。また、温度差が痒みの原因となる方は、寒い時はややぬる目のお湯、暑い時はやや熱めのお湯に入浴し、お風呂からあがった時の温度差を減らすと痒みの対策になります。
仏教用語に「身土不二(しんどふじ)」という考え方があります。「身」と、「土」は切り離せない、という意味です。上記の「ヨモギ」と共通するのですが、暮らしている土地で収穫した旬の食材が、体の健康にも役立つという考え方です。気候や環境の異なる外国産の食材や、季節外れの食べ物は自然に反していると考えられているからです。
実際に、旬の食材にはその季節に必要な栄養素を豊富に含んでいます。旬でない食材を食べて胃や腸を弱らせると、それが肺につながり、肌に影響を及ぼすこともあります。冷え性の方などは、旬の食べ物を温熱調理するなど、体質に合った食べ方をすることが大切です。
■理想的な痒みの鎮め方
科学的には、冷刺激が最も効果的で安全な痒みの鎮め方といわれています。
皮膚は温度が下がると、痒みの神経も含めた知覚神経の活動が抑えられることがわかっています。また冷覚を伝える神経の活動が、痒みを抑えることも経験的に知られています。しかし、冷やしすぎても皮膚に悪影響を与えてしまいます。
保冷剤を使って冷やす場合、冷凍するより冷蔵庫で冷やし、痒いところに当てるのが一番です。しかし、夏などはすぐに冷たい感じがなくなってしまいます。冷凍した場合、冷たさの調節はガーゼやタオルなどを巻いて加減すると良いでしょう。また、体全体が痒くなってしまった時は、水やぬるめのシャワーで体全体を冷やしたり、クーラーで部屋全体を冷やすことも効果的です。
また、副交感神経が働いている時は皮膚の温度が上がります。自身の痒みのペースがつかめてくると、副交感神経が働く食事の後、仕事や学校から家に帰ってリラックスしている時、または、眠くなった時など、副交感神経を意識して前もって薄着になっておくとか、家に帰ってきたら、ぬるいシャワーを浴びる習慣にするなど、自身に合わせた痒み対策を生活に取り入れるのも良いでしょう。
■アトピー性皮膚炎の漢方治療
漢方では、「内に病あれば、外に現れる」といわれます。これは、アトピー性皮膚炎の表面的な湿疹に目が行きがちですが、目に見えない内側、精神的ストレスや体質が大きく関係していると考えられるからです。
漢方では、「気・血・水」を不調の原因を知る物差しのように考えられています。アトピー性皮膚炎は、そのうちの「気(エネルギー)」の不足によるものとされています。体力のない乳幼児は「気」が足りない状態で、発症する確率が高くなかなか良くならない時期です。しかし、小学生に入る頃には体力も付き、アトピーや喘息が良くなる場合が多いことからも理解していただけると思います。
また、「気」の不足による解毒機能の低下も原因の一つと考えられています。食べ物から補給される「気」ですが、胃腸の消化吸収力が低下していると十分なエネルギーが作れません。すると、「血」や「水」にも悪影響を及ぼし、肝臓の機能低下により解毒できなくなるという悪循環が起こっているということです。
西洋医学ではステロイド剤、プロトピック、ネオラールなどで炎症や痒みを抑えたり、免疫力を抑制する治療になりますが、漢方では、体に不足しているエネルギーを補い、十分なエネルギーが全身に巡るように導きます。そして、低下している消化吸収力を高めることで、肝臓の機能を回復させ解毒力を高める治療を行います。
それと同時に、皮膚の乾燥や炎症を緩和する治療も行います。一言で「湿疹」と言ってしまえば簡単なのですが、湿疹にも様々な種類があります。漢方ではその湿疹、炎症、乾燥の具合に応じた最適な処方があります。
例えば、紅斑(炎症などにより血管が拡張し皮膚表面が赤くなった状態)には、白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)、丘疹(ブツブツなどと表現されることが多い状態)には、温清飲(うんせいいん)、水疱(透明な水分が溜まって盛り上がった状態、水ぶくれ)には、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)という風です。アトピー性皮膚炎の湿疹は皆同じではありませんし、時期によってその症状は変わります、漢方薬は一人一人、その時その時に合わせたオーダーメイドの治療といえるかもしれません。
体表面にある湿疹にだけ目を向けるのではなく、体の内側も含め全体を見て治療する漢方は、アトピー性皮膚炎の治療に向いているといえます。漢方薬の中には副作用を伴う物もあります、治療を効果的に進めるためには、専門家に相談し適切な処方をしてもらうことが何よりも大切です。また、漢方薬だけに頼るのではなく、生活習慣や食習慣の見直しも大切な治療の一つです、症状を軽減させるためにできることから始めてみましょう。
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