膵臓の病気
膵炎(急性・慢性)の症状と治療|食事・養生と漢方の考え方
膵炎(急性・慢性)の症状と治療・日常生活の養生法
膵炎には、突然の激しい腹痛で発症し入院治療が必要になることの多い「急性膵炎」と、炎症が長期間続いて膵臓の組織が徐々に硬く変化し、消化機能やホルモン分泌が少しずつ低下していく「慢性膵炎」があります。このページでは、急性膵炎の治療と受診の目安、慢性膵炎の症状、そしてコーヒー・温め・ツボといった日常生活で気になるポイントと漢方の考え方を、まとめてご紹介します。
急性膵炎と慢性膵炎の違い
急性膵炎は、膵臓が自らの消化酵素で炎症を起こす病気で、突然の激しい上腹部痛で発症することの多い疾患です。多くの場合入院による治療が必要になります。
一方、慢性膵炎は長年の炎症の繰り返しにより膵臓が線維化し、元に戻らない変化が進んでいく病気です。原因として最も多いのは長期間の飲酒とされ、そのほか胆石や原因が特定できないもの(特発性)もあります。急激な激痛で発症する急性膵炎とは異なり、ゆっくり進行するため気づきにくいのが特徴です。また、急性膵炎を繰り返すと慢性膵炎へ移行することがあり、両者は連続した経過としてとらえることが大切です。
急性膵炎の症状と受診の目安
症状のほとんどは腹痛です。上腹部の激しい痛みが持続し、前かがみでうずくまると楽になる傾向があります。痛みの程度は軽いものからじっとしていられない激痛まで個人差があり、みぞおちからへそ、背中に及ぶこともあります。吐き気・嘔吐を伴うことが多く、吐いても腹痛は続きます。食事や飲酒の数時間後に突然発症することもあります。
上腹部や背中の強い痛みを感じる場合は、様子を見ずに早めに内科・消化器科を受診してください。
急性膵炎の治療 — 絶飲食・輸液・入院
急性膵炎の多くは軽症から中等症で、膵臓を休ませるための絶飲食と、十分な輸液により順調に回復していきます。ただし、発症から2〜3日は経過を十分に観察しながら適切な治療が必要となるため、ほとんどの場合入院が必要となります。
治療は一般に、(1) 絶飲食による膵臓の安静、(2) 輸液による脱水・循環の管理、(3) 痛みに対する鎮痛薬、を基本とし、状態に応じて感染対策などが行われます。回復に伴い、脂質を抑えた食事から段階的に食事が再開されます。
重症化した場合
重症急性膵炎になると、顔面や皮膚が蒼白となり、冷や汗、血圧低下、心拍数の増加によりショック状態となります。感染を伴う場合には発熱があり、呼吸は浅く小刻みとなり、尿量の減少により腎不全を起こします。また、肝不全から生じる黄疸や意識障害、消化管出血による黒色便がみられることもあります。重症になると炎症が膵臓のみにとどまらず、肺・腎・肝などの重要臓器にまで波及し、多臓器不全を起こす場合もあります。重症例では集中治療が必要となります。
退院後の再発予防
急性膵炎の再発率は、アルコール性で46%、そのうち80%は4年以内に再発したとの報告があります。重症急性膵炎の再発率も20%とされ、全体として再発率の高い病気です。
再発予防の柱は、原因への対処(アルコール性であれば禁酒、胆石性であれば胆石の治療)と、脂質を控えた食生活の継続です。急性膵炎を繰り返すと慢性膵炎へ移行することがあるため、退院後の生活管理が重要になります。
慢性膵炎の症状
初期の症状
初期には、みぞおちや背中の鈍い痛み・重苦しさが代表的です。脂っこい食事やアルコールの後に痛みが強くなる傾向があり、腹部の張り、吐き気、食欲不振を伴うこともあります。痛みが軽く「胃の不調」と思い込んで見過ごされるケースも少なくありません。
進行期の症状
炎症が進んで膵臓の働きが低下すると、消化酵素の不足により消化不良・下痢(脂肪便)・体重減少が現れます。さらに進行するとインスリンの分泌も低下し、糖尿病を合併することがあります。一方でこの時期には腹痛がむしろ軽くなる場合があり、「痛みが減った=改善」とは限らない点に注意が必要です。
みぞおちや背中の痛みが繰り返す、原因不明の下痢や体重減少が続く、といった場合は、自己判断せずに消化器内科の受診をおすすめします。
膵炎と食事・嗜好品
コーヒー・カフェインは飲んでよいか
コーヒーに含まれるカフェインは胃酸の分泌を促し、膵臓への刺激となり得るため、症状がある時期は控えることが一般的にすすめられています。コーヒーのほか、濃い紅茶・緑茶、炭酸飲料、香辛料の強い食品も同様に膵液の分泌を刺激するとされます。症状が落ち着いている時期の少量については個人差が大きいため、主治医に相談したうえで判断してください。
アルコール・脂質の考え方
慢性膵炎の進行を抑えるうえで最も重要なのは禁酒です。また、脂質は膵液の分泌を強く促すため、痛みを繰り返す時期には脂質制限(目安として1日30g程度まで)が指導されることがあります。制限の程度は病期によって異なるため、主治医・管理栄養士の指導に従ってください。
お腹を温めてもよいか
症状が落ち着いている慢性期に、冷えの対策としてお腹や腰まわりを温めることは、血行を促しリラックスにつながる養生として東洋医学では広く行われています。ただし、強い腹痛・発熱など炎症が疑われる時期(急性膵炎や慢性膵炎の急性増悪期)に温めることは症状を悪化させるおそれがあるため避けてください。強い痛みがある場合は温めるかどうかの判断より先に、速やかな受診が必要です。
膵臓にかかわるツボと東洋医学的ケア
手のひらのツボ
東洋医学では、手のひら中央の「労宮(ろうきゅう)」をはじめ、消化機能と関わりが深いとされるツボへの穏やかな刺激が、緊張をゆるめ胃腸の調子を整える目的で用いられることがあります。指の腹で心地よい強さで数秒押す程度で十分です。
なお、ツボ刺激はあくまで体調を整える補助的なケアであり、膵炎そのものを治療するものではありません。治療は必ず医療機関で受けたうえで、セルフケアとして取り入れてください。
膵炎に対する漢方的アプローチ
漢方では、慢性膵炎にみられる消化力の低下や冷え、気血の滞りといった状態を体質面からとらえ、消化機能を支え全身のバランスを整えることを目指します。また、急性膵炎からの回復後に「食欲が戻らない」「疲れやすい」「胃腸が弱くなった」といった不調が続く場合にも、体質面から回復を支える目的で漢方を取り入れる方法があります。
病院での治療(禁酒・食事療法・消化酵素薬など)や退院後の指導を前提に、体質改善の面から漢方を併用したいという方は、現在の治療内容とお薬の情報をお持ちのうえ、膵炎に伴う体質のお悩み相談(お問い合わせフォーム)からご連絡ください。遠方の方は全国対応のオンライン漢方相談のお申し込みもご利用いただけます。
よくある質問
Q. 慢性膵炎は治りますか?
A. 線維化した膵臓を元に戻すことは難しいとされていますが、禁酒と食事管理により進行を抑え、症状を安定させることは可能です。早期に対処するほど膵機能を保ちやすくなります。
Q. 痛みがなくなったら治ったと考えてよいですか?
A. 進行期には痛みが軽くなることがあり、改善とは限りません。定期的な検査を続けてください。
Q. コーヒーを完全にやめる必要がありますか?
A. 症状のある時期は控えるのが一般的です。安定期の可否は個人差があるため主治医にご相談ください。
Q. 急性膵炎は退院すれば安心ですか?
A. 再発率が高い病気のため、原因への対処(禁酒・胆石治療)と脂質を控えた食生活の継続が大切です。繰り返すと慢性膵炎へ移行することがあります。
本ページは一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。激しい腹痛など症状がある場合は直ちに医療機関を受診してください。