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膵臓の病気
仕事やプライベートでお酒を飲みに行く回数が多い、毎日の晩酌は欠かさない、心当たりのある方は多いのではありませんか。実は、急性膵炎で入院する方の約80%はアルコールが原因といわれ、日本での発症は年々増えています。女性は70歳代、男性は50歳代の方が多く、男性に多い病気といわれています。
膵臓は、みぞおちとヘソの間、胃の裏側(背中側)に横たわる15~20cmくらいの消化器系の臓器です。その形は、右側が太く左側ほど細くなっています。太い部分を「膵頭部」、左側の細い部分を「膵尾部」、そして、その間を「膵体部」と呼んでいます。膵臓の働きは、食物の消化に必要な消化酵素を含んだ膵液を出して消化を助けること(外分泌機能)、そして、血糖値を調整するインスリンなどのホルモンの分泌により、糖尿病にならないように調整すること(内分泌機能)、この二つの仕事を担っている臓器です。
膵管は、膵臓から分泌される膵液(消化液)の通り道です。膵液には、タンパク質や脂肪などの栄養素を分解する酵素が含まれ、この膵管を通って十二指腸へ送られます。膵臓によって分泌された栄養を各細胞に供給しエネルギーを産生しています。
心臓や肝臓などの知らない人はいないくらいの臓器とは異なり、膵臓は体のどの辺りにある臓器なのか、どんな働きをするのか、あまり知られていないかもしれません。しかし、人が健康に生きていく上で、とても重要な働きをする臓器だということが、分かっていただけたと思います。
急性の炎症が膵臓に起こったものです。通常、膵臓内で作られた消化酵素は十二指腸に送られた後、初めて活性化します。しかし、何らかの原因によって膵臓や膵管内で活性化し、突然、膵臓や膵臓周辺の臓器を自ら消化(自己消化)してしまいます。これを急性膵炎といいます。
急性膵炎の発症は、年間およそ6万人といわれ、男女比は2対1で男性に多い病気です。また、男性は50代、女性は70代が最も多く、男性は「アルコール」、女性は「胆石」が原因であることが多いといわれています。男性患者のほとんどはアルコールが原因で、ビール中ビン2本程度でも発症する可能性があり、お酒の量が増えるほど発症する確率は高くなります。
また、女性の原因として多い「胆石」についてですが、胆管の出口と、膵管の出口が同じため、胆石によって膵液がせき止められることで起こります。
ここで、「じゃあ胆石は何故できるの?」という疑問が湧きます。胆のうにできる結石が胆石です。これは年齢を重ねることでできやすくなります。特に更年期の女性に多くみられるコレステロールの増加が原因といわれています。健康診断でコレステロール値が高いという検査結果の方は、食生活や生活習慣を見直すことで改善されることが多いです。
症状のほとんどは腹痛です。患者さんは痛みを軽減させるために前かがみになり、右を下にしてうずくまる場合が多く見られます。このように上腹部に激しい痛みを訴える人が多いのですが、痛み程度は、軽い痛みから、じっとしていられないほどの激痛まで個人差があるようです。痛みは持続性で、痛む箇所もみぞおちからへそまで広い範囲に及ぶ場合もありますし、また、痛みの場所が特定できない場合もあります。
次に多いのが、吐き気と嘔吐です。吐いても楽になることはなく腹痛は続きます。痛みを背部に感じる人もいますし、発熱を伴う人もいます。他の症状としては、食欲不振や膨満感などもあります。このような症状は、徐々に出てくることもあれば、食事や飲酒の数時間後に突然激しい腹痛が現れることもあります。
痛みが楽になる場合もありますが、時間とともに重症化することもあるので、上腹部の痛みや、背中に痛みを感じる場合は、早めに内科、消化器科を受診することをお勧めします。
急性膵炎の多くは、軽症から中等症で、絶飲食と輸液により順調に回復していくのですが、発症から2~3日は経過を十分に観察しながら適切な治療が必要となるため、ほとんどの場合、入院が必要となります。
重症急性膵炎になると、顔面や皮膚が蒼白となり、冷や汗、血圧低下、心拍数は増加してショック状態となります。感染を伴う場合には発熱があり、呼吸は浅く小刻みとなり、尿量の減少により腎不全を起こします。また、肝不全から生じる黄疸(おうだん)や意識障害もみられ、消化管出血が原因となる黒色便がみられることもあります。このように、重症になると炎症が膵のみにとどまらず、肺・腎・肝などの重要臓器にまで波及し多臓器不全を起こす場合もあります。
急性膵炎の再発率は、アルコール性が46%、そのうちの80%は4年以内に再発したとの報告もあります。また、重症急性膵炎の再発率も20%とのことですから、全体的に再発率は高いと感じられます。
急性膵炎臨床診断基準というものがあり、以下のうち2項目以上を満たし、ほかの膵臓疾患や急性腹症を除外したものを急性膵炎と診断しています。
1.上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある。
2.血中、尿中、あるいは腹水中に膵酵素の上昇がある。
3.画像(腹部CT検査や腹部超音波検査)で膵臓に急性炎症に伴う異常がある。
急性膵炎は時々刻々と変化するため重症であるかどうかの診断を早期に行い、適切な治療法の選択を行うことが重要となります。医療機関にもよりますが、血液検査からCT検査も含めて30~40分以内で確定診断をし、治療を開始することができるようです。
急性膵炎は通院での治療は困難なため、緊急入院となる場合がほとんどです。治療の大きな柱は、絶食と十分な点滴を行うことです。食事をすると膵臓の消化酵素がより活発になるため、絶食は膵臓を休ませるために重要な治療となります。また、急性膵炎は、お腹の中に浸出液(水が血管などから染み出した状態)が溜まり、血管内は水分不足となります。それを解消するため十分な点滴を行う必要があります。
急性膵炎の治療手順
1.絶飲食し、膵臓の安静をはかります。胃酸分泌抑制薬を使い潰瘍や消化管出血を防ぎます。
2.輸液による栄養管理
3.蛋白分解酵素阻害剤を用い、急性膵炎の本態である自己消化している酵素を抑えます。
4.膵臓内、膵臓周囲の感染を防ぐため、抗生物質を使います。
急性膵炎の治療期間は軽症の場合は2~3週間で改善し、膵機能障害などの後遺症が残ることは少ないです。しかし、重症の場合の致命率は8.9%、最も重症な場合は59.3%といわれ、良性の疾患でありながら、亡くなってしまう危険のある恐ろしい病気です。
アミラーゼもリパーゼも、膵臓に含まれる消化酵素の一つです。
【アミラーゼ】
アミラーゼは別名ジアスターゼといいます。十二指腸に分泌されて、でんぷん(糖類)を分解します。アルコールの飲みすぎや脂肪のとりすぎ等で膵細胞が破壊されると、アミラーゼが血液中にたくさん出てきて上昇します。その値が高くなると、急性膵炎、慢性膵炎、膵癌、膵嚢胞等の膵疾患のほか、イレウス(腸閉塞)、卵巣腫瘍、肝炎、腎不全等が疑われます。
【リパーゼ】
十二指腸に分泌されて脂肪を分解します。膵細胞が破壊されると、リパーゼも血液中にたくさん出てきて上昇します。その値が高くなると、急性膵炎、慢性膵炎、膵がん、膵嚢胞等の膵疾患が疑われます。アミラーゼに比べて、リパーゼは膵臓以外の病気の影響が少ないため、リパーゼが上昇していたら、膵臓の病気の可能性が高くなります。
膵臓は一度傷つくと弱くなり、再発の可能性を否定できません。このため治療後は食習慣や生活習慣の見直しが重要になります。
急性膵炎は、アルコールをはじめ、肉や揚げ物、ケーキなど脂肪分の多い食べ物の摂りすぎが原因で発症します。ですから、ほとんどの方は食生活を見直すことで予防できるといっても良いでしょう。消化の良い低脂肪食に切り替え、膵臓にかかる負担を軽くすることが大切です。それは、女性の原因といわれている胆石の予防としてコレステロールの数値にも良い変化をもたらすと思われます。
急性膵炎予防のための適正な飲酒量は、1日に2ドリンクまで、日本酒なら1合以下、ビールなら中ビン1本以下、焼酎なら200mLのコップ半分以下にとどめるようにするのがベストです。また、お酒を飲むと脂っこい料理や刺激のあるおつまみが食べたくなりますが、膵臓に負担をかけてしまうため控えるのが良いでしょう。
また、お酒とセットのように欲求が高まる煙草ですが、百害あって一利なしです。節煙ではなく禁煙・断煙することをお勧めします。実は、アルコールが原因の膵炎患者さんの8割は喫煙家といわれています。
「食養生」とは書いて字のごとく、食を通じて命を養うことです。漢方には「医食同源」という考え方があり、食養生が健康管理や病気治療のためにとても大切なものの一つと考えられています。
膵臓は、飲んだり食べたりすることで消化に必要な酵素を分泌するため、症状がある場合は絶食して膵臓を休ませることが何よりも大切です。
絶食中の水分も最低限にとどめ、絶食後はおも湯などの流動食、膵臓の回復を見ながら、おかゆなどの脂肪が制限された食事から、脂肪の含まれている食事へとゆっくりゆっくり、膵臓を労りながら戻していきます。
食養生は病気になった時や、病後の体を治すためだけに効果があるというわけではありません。毎日の健康維持のために、自然治癒力を高めて病気を予防、または改善するためにもお勧めです。
野菜や魚介類の旬を知り、それらをバランスよく食べ、食べ物が持つ生命力を体に取り入れましょう。
また、陰陽五行説では、以下の図の赤い文字の箇所、脾臓と膵臓は[土]に属し、消化吸収をコントロールする[脾]に分類されます。[脾]を元気にする食材を上手く献立に組み入れ、体を温める食生活に変えることもお勧めです。(生姜・ニンニクの芽・ネギ・カボチャ・インゲン豆・鮭・マグロなど)
膵炎予防の基本は、胃を刺激しないことです。胃に食べ物が入ると、脳から消化酵素を出す指令が出て、膵臓から膵液が分泌されます。では、胃を刺激しない食養生とはどんなことに気をつければ良いのでしょう。
高脂肪食は、消化に時間がかかり胃に長くとどまり負担が大きいため、低脂肪食がお勧めです。反面、低脂肪食は、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)が不足する可能性があります。緑黄色野菜、卵、しらす干し、納豆など、意識して摂取するようにしましょう。
低脂肪食のイメージは、カロリーを減らしダイエットなど肥満を解消することが目的と思っている人が多いです。しかし、低脂肪食には、乳癌や結腸直腸癌、心臓病、糖尿病の死亡リスクや発症リスクが減ったとの報告もあります。急性膵炎予防のためだけではなく、様々な病気に効果的といわれる低脂肪食への切り替えは、将来的な健康作りにもお勧めできます。
食物繊維の多い食材は消化に時間がかかるので、消化の良い食品を選びましょう。また、小さく切る、すりおろす、煮る、茹でる、蒸すなど調理法に気をつけると、消化も早く胃や膵臓の負担が軽くなります。そして、自分の意思でできる唯一の消化作業「良く噛む」ことも意識して実践したいものです。
その他として、刺激のある食べ物、香辛料、炭酸飲料、熱いもの、冷たいもの、カフェイン、塩気の強いもの、酸味の強いものなども控え、1日3食できるだけ決まった時間に、腹八分目を意識した食事を心がけましょう。
「腹八分目」、口で言うのは簡単ですが、毎日の食事で実践するのは、なかなか難しいと実感している方は多いのではありませんか。目の前に料理が並んでいるとついつい箸が止まらない。そんな方にお勧めの方法です。
早食いの人の特徴は食事の始めから終わりまで、箸を持ったままの状態です。そのため、次から次へと食べ物を口へ運ぶことになります。まず、ひと口ごとに、必ず箸を置く習慣をつけると、食事のペースがゆっくりになります。すると、満腹中枢が刺激され食べ過ぎを防止することができます。
満腹にならないと食事をした感じがしないという人は、肉類や揚げ物でなく野菜を利用しましょう。野菜は、たくさん食べてもカロリーが低いため、自然にカロリーを制限することになります。厚生労働省が推進する「健康日本21」では、成人の1日当たりの野菜摂取量の目標を350gとしています。しかし、すべての世代でそれを下回っていると報告されています。野菜の中には、カボチャやイモ類、大豆など、腹持ちのするものもたくさんあります。こうした野菜を積極的にメニューに取り入れ、満腹感を得ながらカロリーダウンさせるという方法もあります。
膵炎予防として低脂肪食が良いと分かっても、いきなり変えることはなかなか難しいものです。普段通りのメニューを少し工夫して膵炎の予防食にしてみましょう。自宅での食事だけではなく、外食の際やコンビニでお弁当を買うときも、低脂肪を意識してみましょう。
サンドイッチに塗られているバターやマヨネーズは、脂肪分が多く含まれています。これらを薄く塗る、またはジャムに変えると、脂肪分を減らすことができます。挟まれている具材も野菜を中心にしたり、サラダチキンなど低脂肪の物を選ぶと良いです。
朝食などで食べる方も多いと思います。オムレツやクロワッサン、菓子パンなどは、バターや油脂を使うので脂肪分が多いです。クロワッサンはベーグル、食パンやフランスパンに、オムレツはゆで卵に変えると、脂肪分が抑えられます。また、朝食の定番ソーセージはハムに、生野菜のドレッシングはノンオイルにするか、手作りして油の分量を調節できるようにすると良いでしょう。
豚肉に衣に、そしてルーにはバターと脂肪分の多いメニューです。カツカレーではなく、野菜をたくさん使ったドライカレーにすると脂肪分が抑えられます。
豚骨や鳥ガラのスープには、脂肪分が多く含まれています。スープを飲まないという選択肢もありますが、それでも脂肪分はなかなか抑えられません。動物系スープより魚介系スープを選ぶ、チャーシューメンより、もやしやねぎが多い野菜ラーメンを選ぶと良いでしょう。
挽肉を使うハンバーグは、とても脂肪分が多いです。挽肉を豆腐や大豆ミートに置き換えたり、同じお肉なら生姜焼きや、皮をカリカリにして脂を落とした鶏肉のグリルがお勧めです。また、クリーム系のスープは牛乳や生クリームが入っているので避け、わかめスープやコンソメスープを選択するのがベストです。
天ぷらは、衣が吸っている油によって高脂肪食となります。天ぷらよりも、米粉を薄くはたいて素揚げにする方がお勧めです。また、油を吸いやすいナスやサヤインゲンを避け、シシトウやアスパラガスなどに変更すると脂肪分を抑えられます。
鰻にはビタミンが多く含まれ、体への吸収も良く夏バテなどの体力回復にとても良いです。しかし、脂肪分が多いので、食べる量は1/2枚程度に抑えた方が良いです。その他の方法として、鰻と穴子は、似ていますが、穴子の脂肪分は鰻の約半分です。代用してみてはいかがでしょうか。
ホワイトシチューやクラムチャウダーには、脂肪分を多く含む牛乳や生クリームが使われています。洋風の煮物であれば、ポトフやトマトスープなどにチェンジするのがお勧めです。また付け合わせのサラダのツナ缶はオイル漬けではなく、水煮缶に変えることで脂肪分を減らすことができます。
以下は、肝胆膵疾患に使用される主な漢方薬です。
漢方薬には即効性が無く、急性膵炎のような激しい痛みに効く薬は無いと思われるかもしれません。しかし、さまざまな内臓の痛み、上部消化器系の病気にも用いられる「柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)」など、上記のような様々な漢方薬があります。
急性膵炎の初期においては西洋医学的治療により、絶食・絶飲を基本として、口から摂取しない点滴などの治療が優先されます。漢方治療は発病後2~7日を経て、口から食事が摂れるようになってから開始するのが良いでしょう。
急性膵炎は、胸と膝をくっつけて座り込まなければならない、背中を伸ばすと激しい痛みがあるような重症の場合の死亡率は30%ともいわれる恐ろしい病気です。日頃お酒が多いと感じている方は改めることで予防することもできます。もし急性膵炎を疑うような症状がある場合は、できるだけ早期に医療機関を受診して、適切な治療を受けることをお勧めします。
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