治療の大きな柱は「薬物療法」「スキンケア」「悪化因子への対策」となります。
アトピー性皮膚炎の症状が現れるということは、アレルゲンやストレスなど、いくつもの原因が重なり「皮膚のバリア機能」が失われている状態です。まずは皮膚の炎症や症状を改善し、皮膚の健康を取り戻すことが大切です。
治療に使われる薬は、過剰な免疫反応をおさえ、炎症を鎮める作用のあるステロイド薬や、非ステロイド性抗炎症薬、免疫抑制薬(タクロリムス外用剤)が主に使用されます。ステロイド薬は、効きめの強さに応じて5つのランクに分類されています。どの薬を、どの程度使うかについては、症状や部位などによって異なります。
基本的な進め方としては、最初は1日数回使用し、症状が改善するにつれ、1日おき、3日おきなどと少しずつ量を減らして、最後には薬ではなく保湿剤に移行します。医師の診断による、症状のレベルに合わせた薬を使用した治療は、アトピー性皮膚炎にとって負のスパイラルともいえる「掻く」という行為を軽減させるためには不可欠な治療です。「掻く」という行為を減らし、刺激に負けないバリア機能を備えた皮膚へと導くのがスキンケア(清潔と保湿)の役目です。
もともと私たちの皮膚には、常在菌という様々な菌が存在しています。健康な皮膚は弱酸性で、それらの菌がバランスよく存在する環境を保っています。しかし、アトピー性皮膚炎の皮膚はアルカリ性に傾きやすく、抵抗力、殺菌力が弱まっている状態で、健康な皮膚と比較すると、黄色ブドウ球菌が多く存在しています。この「黄色ブドウ球菌」が出す毒素がアトピー性皮膚炎を悪化させることがわかっています。
そのため、汗をかいたら洗い流し、炎症を悪化させる「黄色ブドウ球菌」を増やさないことが大切です。また、バリア機能が低下した皮膚には保湿剤も不可欠です。入浴後は時間をあけずに保湿剤を塗り、スキンケアに努めましょう。国立成育医療研究センターによると、乳児期から保湿剤を使用したスキンケアを続けると、アトピー性皮膚炎の発症を減らせることが報告されています。
保湿剤の使い方にはポイントがあります。一般的に保湿剤といわれているものには、ヒルドイドなど保湿のためのものと、ワセリンのような保護薬があります。ワセリンはただ皮膚に塗れば良いというわけではありません。お風呂上がりなど、まだ肌に水分が残されている状態のところに馴染ませるとしっとりします。皮膚の角層の水分量は、入浴後約10分で急激に減少するといわれていますから、入浴後は素早くケアするのが良いでしょう。
医師の処方で用いられる一般的な保湿剤ヒルドイドは、自身の皮膚に合う市販品でも良く、乾燥が気になる季節は、保湿剤を塗ってからワセリンを塗り重ねると効果的です。